北朝鮮が事実上の長距離弾道ミサイルを発射した2月7日、日本のインターネット上には怒りの声が溢れた。といっても、北朝鮮の挑発行為そのものに、ではない。それによって、アニメ『ワンピース』の放送が中断され、臨時ニュースに切り替わったことにである。
「日曜日唯一の楽しみのONE PIECEが北朝鮮のミサイルによって消え去りました 僕は北朝鮮を許しません」
「ワンピ(ワンピースのこと)に比べたらミサイルなんてゴミムシにも満たない話題なんだよクソが!!!!」
こうしてネット上のトレンドワードには、ミサイルとワンピースが並ぶ珍妙な事態となった。それを平和ボケなどと批判するつもりはない。ただ事実として世間は、北朝鮮のミサイルに「飽きている」のである。
それには、テレビをはじめとする報道にも原因がある。テレビは臨時ニュースをはじめ、大々的に特集を組んで派手に取り上げたが、その内容はまるで数年前の焼き直しのようだった。
沖縄に迎撃ミサイルPAC3が配備され緊張する地元住民たち、発射に抗議する首相の声明、そして「怖い、心配」という街頭の声。まるで前回(2012年)の発射のデジャブである。
とりわけ、各局とも毎回決まって在日コリアンが多く住む大阪・鶴橋に行って「やめてほしい」という声を拾うことに、いったい何の意味があるのか。もし万が一「ミサイル発射のどこが悪い」という意見が出たら、果たしてそのコメントは放送されるのだろうか。結局、すべてが予定調和なのだ。
※週刊ポスト2016年2月26日号