『おやじダイエット部の奇跡』などの著書があり、“糖質制限ダイエットの伝道師”として知られるノンフィクション作家の桐山秀樹氏が急死していたことが分かった(享年62)。死因は心不全で、滞在中のホテルのベッドで倒れていたという。
桐山氏は2010年に糖尿病と診断されたことをきっかけに、ご飯やパン、麺類、ジャガイモのような糖質(炭水化物)を多く含む食品を食べない糖質制限を実践。3週間で20kgのダイエットに成功した体験を広く紹介し、人気のダイエット法として定着させた。
ネット上では、今回の悲報を伝えるワイドショーなどに批判が集中した。
〈まるで糖質制限ダイエットのせいだと言わんばかりの内容〉
〈ダイエットと死因の因果関係ははっきりしてないはず〉
〈心臓発作などの急死の原因に糖質制限ダイエットを加えようとしている〉
糖質制限自体はもともと糖尿病を治療する食事法として一般的に行われているものだが、桐山氏の死去と過度な糖質制限ダイエットへの警告を結びつける報道に違和感を抱く視聴者が多かったのだ。
では、糖質制限ダイエットは安全なのか危険なのか――。この議論はこれまでも度々繰り返されてきたが、じつは糖尿病の専門医でも「推進派」と「反対派」が拮抗しているのが現状だ。2014年5月に開かれた糖尿病学会の学術集会で糖質制限食の是非が話し合われた際も、意見は完全に割れた。
推進派の医師は、糖質制限によって短期間で体重を減らすことができるメリットのほか、血糖や血圧、脂質の値がすべて改善し、糖尿病のさまざまな合併症予防も期待できると主張した。
一方、反対派の医師からは、糖質を抑える代わりにタンパク質や脂質の摂取量が増えれば、腎機能や骨密度の低下、悪玉コレステロールの増加による動脈硬化や心筋梗塞のリスクが高まる、と真っ向から対立。糖尿病学会としては、〈長期的な食事療法としての遵守性や安全性などを担保するエビデンスが不足しており、現時点では薦められない〉(2013年に出した提言)と慎重な立場を崩していない。