陸上選手・福士加代子(ワコール)が1月31日に開催された大阪国際女子マラソンで叩き出した優勝タイムは2時間22分17秒。リオ五輪代表の座をほぼ確実にしているにもかかわらず、最終選考レースである3月13日の名古屋ウィメンズマラソンに出場するという。この判断については「無謀で無意味」といった意見も陸上関係者からは出ている。
2時間22分台でフルマラソンを走る選手が中40日で再びレースに出ることは、選手生命を脅かす肉体的な負担となる。スポーツ科学が専門の桐蔭横浜大学・桜井智野風教授が語る。
「鍛え抜かれたマラソン選手でも、フルマラソンを走れば筋損傷を起こす。回復するには2~3週間はかかります。回復前にまた走ると、走ることは走れても、ダメージはかなり大きくなる。ケガのリスクも高くなります」
大阪国際で中継の解説を担当したスポーツジャーナリストの増田明美氏も名古屋出場に警鐘を鳴らす。
「あの瀬古利彦さんでさえ、暑さ対策が求められていたロス五輪の前には腎臓を壊し、レースの1週間前から血尿が止まりませんでした。マラソンは内臓疲労も起こすんです。自己ベストを大幅に更新した福士さんは、筋肉だけでなく内臓も疲れきっているはず。名古屋も走ろうなんて自殺行為です。
それに、福士さんの大阪での成績は十分に“内定”に値します。陸連も内心はそう思っているけれど、今ははっきり言えないだけ。私は、福士さんは名古屋を走らないと信じています」
名古屋に強行出場することのデメリットは他にもある。リオ五輪をベストコンディションで迎えられなくなる可能性が高いのだ。