堺雅人主演で好評のNHK大河ドラマ『真田丸』。三谷幸喜が脚本を手掛け、従来の大河のイメージを覆すさまざまな“仕掛け”が何かと話題だが、実力派俳優達の“怪演”に注目していると言うのは、時代劇研究家でコラムニストのペリー荻野さんだ。ペリー荻野さんが、独自の視点で新大河に斬り込む。
* * *
とにかく速い速い展開が続く大河ドラマ『真田丸』。本能寺の変が起こったと思ったら、あっと言う間に「秀吉が明田光秀を討ちました」と知らせが。それも手紙で。普通の戦国物語であれば、本能寺の前夜で一回、当日で一回、その後、秀吉が中国の毛利攻めから一気に駆け戻って明智軍と戦うあたりで二回くらいは話が続くというのに、『真田丸』はこの過程が数分で説明されるという高速回転である。
では、今後の『真田丸』はどんな面白さが展開していくのか? 予想できるのは「実力派俳優の怪演祭り」になるのではということだ。その片鱗はすでに徳川家に出ている。
徳川家康(内野聖陽)は、堂々たる戦国武将というよりは心配性で小心者のお殿様。信長が討たれたと一報を聞いて、これは一大事と戦う覚悟かと思ったら、伊賀の山をひたすら逃げ回る。落ち武者狩りに追われて「うああああ~」と泣きべそだ。大河ドラマ史上、もっともとほほな家康といってもいい。
そんな家康を支えるふたりのホンダも怪演っぽい。本多忠勝(藤岡弘、)は、ヒゲもじゃで見るからに熱血漢。何かというと大声で吠えるように意見を言う。まるで番犬だ。常に甲冑姿でむさ苦しく、家康の前にどかっと座ると体からホコリが出たりする。伊賀越えの疲れでフラフラな家康に「おぬしは元気じゃのう」と半ば嫌味で言われても「それがしは一日で回復し申した!! ワンワンっ!!」(とは言ってないが、吠えてるように聞こえる)。
もうひとりのホンダ、本多正信(近藤正臣)は、すぐ出陣!と鼻息の荒い忠勝とは正反対。「あとはのらりくらりと…」と狡猾そうににっこり。ついこの前まで出演していた朝ドラ『あさが来た』の大店の当主役とは違って、正信はどこか得体が知れない。家康とWホンダが出てくると、BGMもどこかフガフガととぼけた曲になっているのも面白い。