“日の丸PC(パソコン)連合”の結成が現実味を帯びている──。不正会計問題の元凶となり、構造改革の本丸といわれていた東芝のPC事業と、富士通の同事業、それにソニーのPC部門が独立したVAIOの3社が「統合」に向けた大詰めの交渉をしているという。
これまで『dynabook(ダイナブック)/東芝』、『FMV/富士通』、『VAIO(バイオ)/旧ソニー』と、それぞれのPCブランドで熾烈な販売競争をしてきた3社。もし事業統合が実現すれば、『LAVIE』シリーズを持つNECレノボグループを抜き去り、国内シェア3割強でトップに躍り出る。
電機業界関係者によれば、「当面は各社のPCブランドを存続させながら、スケールメリットを生かした部品調達や生産委受託、販売チャネルの統廃合などでコストダウンを図っていく」狙いがあるようだ。
だが、中長期的には3ブランドの技術やノウハウを結集させた新ブランドのPCが開発されても何ら不思議はない。ネット上では早くも“FMVAIObook”の誕生か? といった書き込みも見られる。
IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏は、こんな期待を寄せる。
「東芝はノート型パソコンの歴史が古く、さまざまな用途に応じたモバイル技術の蓄積があります。また、富士通は携帯電話で培った顔・指紋認証のセキュリティー技術をパソコンでも売りにしています。両社はテレビ番組やネット動画など映像も楽しめるマルチメディアパソコンの開発にも力を入れてきましたしね。
そこに、斬新なデザインでコアなファンの多いVAIOのスタイルが組み合わされば、日の丸連合ならではの高性能パソコンができあがると思います」
問題はそこまで機能を詰め込んだパソコンを開発して、ニーズがあるかという点だろう。
ただでさえ日本のPC市場はスマホやタブレットの勢いに押されて右肩下がり。2014年の出荷台数は前年比1.5%減の1539万台(IDC調べ)で、携帯・スマホの半分以下の規模しかない。
「いまやノートパソコンはHPやDELLといった海外メーカーでも10万円以下で性能のいい製品が買えますし、そもそもメールやネット、ゲームなどをやる程度ならスマホで十分。ノートパソコン自体の需要がなくなりつつあるのです。
かといって、日の丸連合が今さら海外メーカーの安価なパソコンに対抗しても勝ち目はありません。そこで、3社が生き残るためには、ビジネス需要に応えるラインアップの絞り込みしか術はないと思います。
敵は海外メーカーのPCではなく、ビジネス用途に特化したパナソニックの『Let’s note(レッツノート)』の牙城をいかに崩すかでしょうね」(前出・安蔵氏)