今季はW杯12戦で11勝。男女通じて最多となる10連勝を飾るなど(2月11日時点)、スキージャンプ・高梨沙羅(19)が破竹の勢いを見せている。
「男子ジャンプ界の“レジェンド”こと葛西紀明(43)も、“沙羅ちゃんの飛距離は男子に混じっても間違いなくトップクラス”と絶賛するほど。女子選手で対抗できる選手は見当たりません」(スポーツ紙記者)
無敵の高梨の照準は2年後の平昌五輪に向けられている。2014年のソチ五輪で「メダル確実」と目されながらも表彰台を逃した悔しさは大きく、最近のインタビューでも、「五輪の失敗は五輪で取り返すしかない。(残り)2年という限られた時間でどこまでできるか。一日一日を大切にやっていきたい」と、雪辱を誓った。
だが、平昌で高梨の前には意外な“強敵”が立ちはだかる。韓国紙記者が語る。
「競技会場となる『アルペンシアリゾート』のジャンプ台は安全面に大きな不安を抱えた状態なのです」
このジャンプ台の竣工は2009年だが、こけら落としとなった国際大会では米国の選手がジャンプ中に転倒し、大怪我を負った。
「ジャンプ台を山頂に設置したために風の影響を受けやすく、助走段階から風でバランスを崩すのです。昨年には国際スキー連盟(FIS)から“世界トップクラスの選手が最高の技術を見せるには適していない”との勧告を受けました」(同前)
FISの指摘を受け、韓国の文化体育観光部は1年かけて補修工事を行ない、去る1月23日、5年ぶりとなる国際大会が開催された。
「平昌五輪組織委員は“80~90%大丈夫”と話しているが、風の問題は解決していない。規定では風速3メートルで競技が中断、5メートル以上で中止となる。この日も強風のため、何度も中断した。
冬の平昌では風速5メートルを超える日も少なくなく、開催自体が危ぶまれる。組織委員会は五輪までに大型の防風幕を設置する計画だが、風の流れを変えることによって今以上に危険な状況が生まれる可能性も指摘されています」(同前)
しかも、その工事にも不安がつきまとう。韓国問題に詳しいジャーナリスト・高月靖氏の話。
「韓国はブルーカラーの待遇の悪さもあって、計画が立派でも、工事をする現場の技術がそれに見合っていないという問題を抱えている。数年来相次ぐ公共工事での崩落事故の原因の多くは手抜き工事でした。2年後までに適切な工事が間に合うかどうかは韓国内でも懸念する声があります」
高梨のリベンジは叶うか。
※週刊ポスト2016年2月26日号