11月に予定されている東京・築地市場の豊洲移転に伴い、中央区が場外への拡散が危惧されるネズミを駆除する“ネズミ退治プロジェクト”を始動させた。
「具体的な作業としては5月と8月に隣接地域の巣穴やマンホールに殺鼠剤を投入し、植え込み等へ捕獲用ボックスを設置。9月から来年3月にかけて近隣の住宅や飲食店に捕獲用の粘着シートを配布します。ネズミはかなり手強いので、プロの業者に委託する。約2200万円の予算が計上されています」(中央区生活衛生課)
中央区が駆除する対象エリアは市場の場外。場内は店を構えている各業者が日常的な駆除にあたってきた。
築地市場・副場長の村上章氏によれば、市場が休みに入るゴールデンウィークとお盆の年2回、市場全体で一斉に殺鼠剤や粘着シートを使用し、ネズミ駆除に取り組んできたという。
「市場移転の際は、限られた時間の中で解体工事やゴミ処理などを一気に行なわなければならない。ネズミ問題についても、駆除のタイミングや方法をこれから詰めていきます」(村上氏)
築地市場内にいるネズミの大半は、魚肉を好むドブネズミ。中には500グラムを超える子猫並みの大きさのものもいるという。個体数は不明だが、「手強い相手」だけに根絶することは難しい。数年前に築地市場でネズミの調査をした、ねずみ駆除協議会会長の矢部辰男氏がいう。
「ドブネズミは水のある場所を好み、足が濡れていたり油が付着していたりするので、粘着シートで捕まえられないこともあります。市場移転の際に完全に駆除することは難しいでしょう」
矢部氏は駆除しきれなかったネズミが街に溢れかえる“ネズミ騒動”を危惧する。舞台は築地に隣接する日本一の高級繁華街・銀座だ。
「住処とエサを失ったドブネズミが営巣のために、銀座まで大移動する可能性は十分あります。1991年に東京都庁が新橋から新宿に移転した際も、旧庁舎の解体後、周辺のビルにネズミが増えたことがありました。ドブネズミは土の中に巣を作るので、植え込みの中に身を潜め、飲食店から出る生ゴミをエサにします」
高級ブランド店の隙間をネズミの大群が駆けていく──想像するだけで背筋が寒くなる。中央区とネズミの戦いが“イタチごっこ”にならないことを祈るばかりだ。
※週刊ポスト2016年2月26日号