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認知症 家族が「勝とう」とせず「負けてあげる」と解決

 あなたは認知症になりたいですか? そう問われたら、首を縦に振る人はいないだろう。しかし、長く生きていく中で、誰しもそうなる可能性がある。厚生労働省によれば、65才以上の認知症の人の数は2012年の段階で462万人、2025年には700万人、高齢者の実に5人に1人が認知症になる見通しとなっている。

「これからはもっと増え、がんのように“2人に1人が認知症”という時代が来るかもしれません。その大認知症時代をどう乗り越えるかというのは社会の大きな課題です」

 そう話すのは、長尾クリニック院長の長尾和宏さんだ。長尾さんは兵庫県尼崎市で365日無休の外来診療と24時間体制での在宅医療に取り組み、日頃から数多くの認知症患者も診ている。

「私はこういう時代には、発想の転換が必要だと思っているんです。“認知症は悪いこと”“怖いもの”という前提で考えるから、家族は親が認知症になったらパニックを起こしてしまう。そして間違った認知症医療や疑問だらけの介護を受けさせて、症状をさらにひどくさせてしまうんです。

 認知症とは本人の問題だけではなく、家族の問題なのです。そんなふうにいうと、それこそ今すぐ本人を介護施設や病院に入れなきゃとか、仕事を辞めて介護に専念しようとか、とにかく認知症に勝とうとするんですね。そうではなくて、家族が負けてあげれば、ほとんどの問題は解決するものなんです」

 実際、あくまでも症状の進行をゆるやかにする薬はあるが、それ以上のものはない。にもかかわらず勝とうとするから、勝てなかった時に眉間に深いしわが寄り、本人のちょっとした振る舞いに憤り、ショックを受ける。

「認知症ケアというのは、施設や病院といった枠の中に閉じ込めず、五感を満たし、本人のやりたいようにさせてあげることがいちばんなんです。そうすることで症状がよくなることも多々あります。抱え込みすぎると、介護者が鬱病になったり、自殺に至ったりする場合もありますので、いい意味で肩の凝らない“いい加減な介護”でないと長続きしません」(長尾さん)

 頭ではわかっていても、気持ちがついていかないのが介護の難しさだ。

「認知症の人と家族の会」東京都支部代表の大野教子さんはこう語る。

「教科書ではああいうことが書いてあったけど、それができない自分は何なんだろうと自己嫌悪に陥ったり、毎日のことなので、腹が立つのも当然です。知識を持つことは非常に大事ですが、それだけで解決できないものもあると知っておいてほしいですね」

※女性セブン2016年3月3日号

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