日本銀行がマイナス金利を導入したことで、2月9日、長期金利が初のマイナスをつけた。135兆円もの年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)にどのような影響があるのだろうか。GPIFは2015年7~9月期に約8兆円の運用損に陥った。当時の日経平均株価よりもさらに値下がりしている現状を考えると、運用損が拡大している可能性は高い。
GPIFが2014年10月末から株式運用を増やしているといっても、昨年9月末時点の保有資産割合は国内株式が21.35%、対して国内債券は38.95%を占める。10年物国債の金利がマイナスになることは、年金運用のあり方を根本から揺るがす緊急事態である。
そもそも日本の公的年金は、自ら支払った年金保険料を将来受け取る「積立方式」ではなく、現役世代の保険料が年金受給者に支給される「賦課方式」となっている。少子高齢化が進むなか、そもそも制度設計に問題があるうえ、マイナス金利が運用に悪影響を及ぼすとなると、そう遠くない未来に年金財政が破綻し、受給額が減額される可能性は十分に考えられる。
年金不安を解消するためには、年金保険料を上げて収入を増やすか、支給年齢を引き上げたり、年金額を減らしたりすることで支出を減らすしかない。ファイナンシャルプランナーの八ツ井慶子氏の指摘だ。
「保険料は2017年度まで段階的に上がり続けることが決まっています。その延長も十分考えられますし、現在65歳の支給年齢は世界的に見れば早いので、引き上げられる可能性もある。年金不安は増す一方です」
危うくなる前に、少しでも早いうちに受け取ろうとして「繰り上げ受給」を考える人も少なくないだろうが、ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は「待った」をかける。
「繰り上げ受給をすれば本来もらえるはずの年金が減額されます。それよりも満額がもらえるまで待った方が賢明です。まして働けるうちは働いて年金より高い収入を得て、むしろ70歳くらいに支給を繰り下げた方が老後資金の不安は少なくなるかもしれません」