2014年の「人口動態統計の概況」(厚生労働省)によれば、年間の死因別死亡者数のうち、脳血管疾患(脳卒中)は約11万4000人でがんなどに続いて4位。このうち脳梗塞は約6万6000人と脳血管疾患の約6割を占めている。
そもそも脳梗塞とは、脳の血管が細くなったり血管に血栓が詰まったりして、脳に酸素や栄養が運べなくなり脳細胞に障害を負う病気である(脳出血、くも膜下出血は脳の血管が破れて血液が漏れ出し、脳の組織が破壊される病気)。
脳の神経細胞が損傷を受けると、再生することは難しく後遺症が残るリスクは高い。主なものは顔や手足の片側麻痺、舌がもつれる言語障害や半身のしびれなどだ。ただ脳梗塞の場合、突然意識を失って倒れるのはかなり重症なケース。「少し顔の片側がひきつる」などの“予兆”があることのほうが多い。
注意すべきは、体の片側の麻痺やしびれ、顔の歪み、言葉がうまくしゃべれないといったものだ。山王病院・山王メディカルセンター脳血管センター長で『働き盛りを襲う脳梗塞』(小社刊)著者の内山真一郎氏が解説する。
「ろれつが回らない場合、大脳の梗塞だと『ラ行』、小脳の梗塞だと『タ行』が発音しにくいといわれている。ラ行やタ行、あるいは『パタカパタカ』と繰り返しいってみて、滑舌やリズムが悪いと脳梗塞が疑われます。麻痺は手足の片側に起きて力が入らないのが特徴です。『最近よく物を落とす』といった時、すぐに拾えるなら通常の老化現象ですが、脳梗塞なら拾えません」
それらの予兆がしばらくすると消えることがある。「一過性脳虚血発作(TIA)」と呼ばれるもので、小さな血栓が血管に詰まることで、一時的にその部分の脳の機能が停止するものの、血栓が自然に溶けて血流が復活して症状が消えるのだ。だが、「治った」と考えるのは危険だ。
「数分から長くても24時間で症状が消えるため『あれっ』と違和感を覚えても放置されがちです。しかしTIAの後に脳梗塞が起こることが多いのです。本人はもちろん、少しでもおかしいと感じたら、家族も指摘して強く受診を勧めてほしい」(同前)
ちなみによく誤解されるが、頭痛が脳梗塞の直接的な症状や予兆であることは稀だという。
※週刊ポスト2016年2月26日号