厚生労働省によれば、65才以上の認知症の人数は2012年時点では462万人だったが、2025年には700万人に増加するといわれている。実に高齢者の5人に1人が認知症になるという試算なのだ。
そうした認知症の介護にはどれぐらいのお金がかかるのか。介護者専門ファイナンシャル・プランナーの河村修一さんが言う。
「例えば、80才の女性がアルツハイマー型認知症を発症したとします。これはゆっくりと進行するのが特徴で、5年ごとに軽度、中度、重度とともに要介護度も高くなった場合、在宅介護にかかる費用は、初期の軽度の時期は約3万円×12か月×5年=約180万円。
中度の時期は、約6万円×12か月×5年=約360万円。重度の時期は約13万円×12か月×2年=約312万円。ここでは、認知症を発症してからの平均余命は約12年として計算しましたが、トータルで約852万円となり、さらに住宅改修費などがプラスされます」
重度になれば遠く離れた親が1人で住むのは難しい。となれば施設に入ってもらうしか選択肢はなくなるが…。
「地方自治体によって違うので、詳しくは親が住んでいる自治体に聞いていただきたいですが、ある地方都市の場合、グループホームだと月10万~20万円程度。要介護3以上が対象の特養(特別養護老人ホーム)は、4人部屋だと月8万~9万円程度、ユニット型個室は月13万~14万円程度。要介護1以上の老健(介護老人保健施設)は、4人部屋が月9万~10万円程度、ユニット型個室が月14万~15万円程度。要介護1以上の介護療養型医療施設は、4人部屋が月9万~11万円程度、ユニット型個室が月14万~17万円程度。
介護保険3施設の内訳はいずれも介護サービス費の1~2割+食費+居住費+その他のサービス費を足したものですが、それぐらいはかかるわけです。当然ながら、有料老人ホームやサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)はもっとかかります」
近頃は悪徳業者の訪問販売被害に遭い、虎の子のお金を失ってしまうケースが後を絶たない。いくら本人に注意するよう言って聞かせても、完全に防げない場合もある。
こんな時に頼れるのが、親の住む地域の地域包括センターや社会福祉協議会だ。NPO法人「パオッコ~離れて暮らす親のケアを考える会~」代表理事で介護暮らしジャーナリストの太田差恵子さんはこう語る。
「日常生活自立支援事業というサービスでは、お金の出し入れのサポートや、振込もしてくれます。悪徳業者による集金があっても払えないので安心です」
近所に親しい人がいたらその人と連絡を取り合い、注意しておいてもらえば、なお心強い。
※女性セブン2016年3月3日号