年初に実行された北朝鮮の核実験後、朝鮮半島の緊張が高まっている。そして2月7日には長距離弾道ミサイルの発射を行った。核の脅威には、核で対抗とばかりに、韓国内でも核保有の是非を問う声が飛び交うなか、遂に朴槿恵大統領までが「核武装論」を口にした。その背景に何があるのか、ジャーナリスト、岸健一氏がレポートする。
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1月6日に北朝鮮が「水爆実験」を発表し、4回目となる核実験に国際社会は強い非難を浴びせている。
その1週間後、朴槿恵大統領は、一年に一度しかない年頭記者会見でこう発言した。 「韓国も戦術核を持つべきではないかという主張については、十分に理解できる」
2013年に韓国ギャラップ社が行った世論調査では、64%が「韓国の核保有」に賛成した。こうした世論は、日本人には理解しづらいだろう。
そもそも、韓国で核武装論が唱えられたのは最近のことではない。韓国世論が核武装に対して抵抗感が薄い背景には、核兵器を持つことによって国際社会での発言力を増し「先進国」と肩を並べたいという願望がにじんでいる。
1980年代後半まで続いた軍事独裁政権下でも、保守派を中心に核武装の論陣は張られ続けてきた。また、朴正煕政権だった1970年代後半にも、米国のカーター政権に在韓米軍撤退の動きがあったことなどを背景に、核兵器を独自開発する計画があり、米国の強い圧力で中止したとされている。
だが、果たしてこの時、韓国が核開発に乗り出す必要があったのだろうか?
確かに、在韓米軍が撤退すれば、北朝鮮と対峙する韓国にとって安全保障上の脅威が高まる。しかし、この時点で北朝鮮に核開発の能力があったとは思えず、実際にその兆候は全くなかった。
軍事的な懸念も通常兵器の増強で十分対応できたはずで、核開発に手を染めれば国際社会、とりわけ米国からの強い反発を招くのは明らかだった。それを承知の上での核開発は、急激な経済成長を推し進めていた朴正煕大統領にとって、核兵器が軍事力以上に、ナショナリズムと自尊心を刺激する「ツール」だったからにほかならない。