『YOUは何しに日本へ?』(テレビ東京系)、『所さんのニッポンの出番』(TBS系)、『世界が驚いたニッポン! スゴ~イデスネ!!視察団』(テレビ朝日系)など、ここ数年、日本の魅力を伝える番組が増えている。どの番組も安定した視聴率を記録しており、“日本礼賛番組”の勢いは止まりそうにない。
そもそもいつからこのような番組が増え始めたのか。元テレビプロデューサーで上智大学教授(メディア論)の碓井広義氏によれば、ターニングポイントは2011年にあるという。
「いわゆる日本礼賛番組が増えるきっかけを与えたのは、東日本大震災だと思います。気持ち的にも日本全体が落ち込んでいた時に、日本および日本人を元気づけようとするメディアのムーブメントが明らかにありました。その流れが現在の状況を作ったといえます。
もちろん、このような番組は震災前からもあることはありました。NHKでは日本の職人さんを紹介する番組をよくやっていましたし、『和風総本家』(テレビ東京系)も2008年からやっています。でも数として少なかったのは確かです」(碓井さん・以下「」内同)
震災のあった年は、日本を元気づけようとする番組が確かに多かった。しかし、今はそういう時期を過ぎているような気もする。日本礼賛番組が定着化したのはなぜだろうか。
「芸人をひな壇に並べただけの番組では満足しないという人たちの知的好奇心を満たしているからでしょう。知識が身についてちょっと嬉しかったり、オトクだったりする。身近なものであるほど、ギャップや驚きがあるはずです。
身の回りの見過ごしていたことを再発見する番組は、視聴者にとっても新鮮に映ったと思います。例えば耳かき一つとっても、作っている人の知恵や工夫が詰まっています。視聴者はその細部に触れて、『自分たちが見たり使ったりするものの裏側にこんなにすごい技やヒストリーがあったのか』と驚くのです」
この手の番組はなぜか、『YOUは何しに日本へ?』『和風総本家』『世界ナゼそこに?日本人』など、なぜかテレビ東京系列が多いのも特徴の一つ。それにも理由があるという。
「テレ東系は『お金をかけるよりも知恵で頑張ろうよ』というスタンスなので、このような番組が生まれやすいのでしょう。実際、番組制作費はリーズナブルです。取材先は番組によってはほとんど日本国内で済みますし、一般の方を取材対象としているので高い出演料もかかりません。
他局がやっていないことをテレ東が最初にやって、そこでヒットしたものを、他局がタレントを揃えて追随している。そんな図式で日本礼賛番組が広がっている、という見方もできます」
また、ユネスコで「和食」が無形文化遺産に登録されたり、海外でクールジャパンへの評価が高まっていることから、日本人にとっても日本を再評価する番組の内容を受け入れやすいムードが高まっていることも人気の背景にあるのだろう。しかし、その広がりがいつまでも続くわけではないと碓井さんは指摘する。
「そうそういつも『すごいね』とはならないし、ネタもかぶってくる。いつかは必ず、飽きが来ますよ」
果たして東京五輪が行われる2020年までこのブームは続くのだろうか。