日韓両政府による慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な合意」は、海の向こうで新たな反日デモの火種となった。一昨年の夏、オーストラリア・シドニー郊外で起こった韓国系ロビイストらによる「慰安婦像設置」運動に対し、現地在住の日本人として異を唱え、設置を阻止した山岡鉄秀氏が現地の最新事情を報告する。
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1月6日、豪州・ブリスベンの日本総領事館前に詰めかけたおよそ15人の若い韓国系住民は、〈日本が強要した性奴隷に抗議する〉〈日本は慰安婦に心から謝罪せよ〉などのプラカードを掲げ、「20万人の女性が性的な奴隷にされた」と訴えるビラを配った。
この日は昨年末の日韓慰安婦合意を受け、韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)が世界に呼びかけた抗議デモの当日。ブリスベンで反日デモが行われるのは初めてのことだ。
これまで動きのなかった豪州の地方都市でなぜデモが起きたのか。鍵は合意後の岸田文雄外相の声明文にある。
声明では、慰安婦問題は〈当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題〉とされた。世界では、日本が、「軍が関与した女性の人権侵害」と明確に認めたものと受けとられている。
多くの日本人は「強制連行と法的責任は認めておらず、『解決済み』とする従来の立場を守った」と評価するが、海外メディアは、「日本政府がついに性奴隷を認め、安倍晋三首相が謝罪した」との論調が主流なのだ。