野球ファンだけでなく世間に大きな衝撃を与えたプロ野球の元スター選手・清原和博(48才)の逮捕。これまで3回逮捕された田代まさし(59才)が激やせしたように、どんどんやせ細っても、健康を崩しても、見た目が変わり果てても、家族から見放されてもやめられない怖さが覚醒剤にはある。
医師のおおたわ史絵さんは、清原容疑者について「逮捕されたことで依存から抜け出せるチャンスかもしれない」と語る。
「薬物依存は、意志や根性ではなく脳の問題なので、本人の正義感や家族や親しい人の支えだけでは乗り越えることができないんです。入院して、薬が体から抜けたらそれで終わりではない。ですから、自力でやめるのは星をつかむような確率といってもいいでしょう。
もしも今回、逮捕で自分が地に墜ちたと感じられ、やめるか死ぬかしかないと思えたのであれば、やめるためのいいきっかけになります。それが“依存から抜け出せるチャンスかも”という発言の真意です。
ですが、逮捕によって常習者であることが広く知れわたったので、出所後、近づいてくるのは売人や常習者仲間ばかりになるというリスクもあります」
現時点で、清原容疑者は警察に入手先を明かしていないと報じられている。それは売っていた暴力団関係者からの報復を恐れるという見方もあるが、田代は「明かしてしまうと出所後に欲しいときに手に入れられなくなるからだ」と指摘した。
2001年、2004年、そして2010年とこれまで3回逮捕された田代まさし(59才)にも同様の経験がある。出所後に開催した握手会で、サングラスをかけた男から連絡先を書いたパッケージに包まれた覚せい剤を手渡されたことが再び転落するきっかけだったと、テレビ番組のインタビューで語っている。
これほどまでに、依存を克服し、覚せい剤を断つことは難しい。その難しさと日々直面しているのが、一般的な生活を手に入れようともがく人々を支援する人たちだ。
「ダルク」の茨城支部代表・岩井喜代仁さんは、自身も薬物経験者。岩井さんは、「依存症はれっきとした病です。またやってしまうのは、その病が治っていないということ」と言う。
「病気ですから、治療が必要です。厚生労働省もようやくその必要性を認識し、治療が必要だと明言するようになり、そうした支援にも乗り出すようになりました。
ただ、治療はとても難しい。ダルクでは、“覚せい剤を使わなくても生活していける”プログラムを組んでいます。
医療機関とも連携して、同じ悩みを抱える人同士が話し合って、レクリエーションなどをしながら、クリーンな生き方を目指している。何時間かけたから治る、何年もやっていないからもう完治、という簡単な話ではない。じっくり治療に取り組まなくてはいけないのです」(岩井さん)
※女性セブン2016年3月3日号