目立ち始めたオレオレ詐欺などの“特殊詐欺”。これは、犯人が不特定の人に対して電話などで連絡し、対面せず、金品を騙し取る詐欺の総称だ。
警視庁調べによる全国の特殊詐欺被害状況のグラフを見ると、2008年の約2万件から2009年には5000件強といったんは全国的に減少したものの、その後、手口が巧妙化し、再び増加傾向にある。2014年には、約28000件にも到達した。
それらの特殊詐欺を専門とする、警視庁・特殊詐欺対策担当管理官の芝山賢一さんは、こう指摘する。
「騙されるのは、注意力のない人や欲張りな人と思われるかもしれませんが、よく言われるように、“自分だけは大丈夫”と考える人ほど騙されやすいのが現実。誰もが被害者になりうるのです」
特に、オレオレ詐欺に代表される親族や身内の情につけ込む手口は、「携帯電話をなくした」「会社の金を使い込んだ」など息子や娘になりすましたり、仕事がらみを装う例が多く、これに加え、最近は流出名簿から妻の名前も調べ上げ、「加奈子(妻の名前)には知られたくない」などと悲痛な声で訴えるケースも登場。具体的な個人名が出ると、わが子と信じてしまう老親が多い。
「ましてや電話口で泣きじゃくったり、孫を名乗ったりすれば、本人かどうかの判別は難しいもの。しかも“劇場型”といって、上司役や弁護士役、警察官役など数人で、数回にわたって巧妙な電話をかけてきます」(芝山さん・以下「」内同)
情報流出の多い昨今では、自分や親の個人情報はある程度漏れていると思って、備えを強化したいものだ。
警視庁調べによると、2015年の都内の特殊詐欺は、被害件数・被害額とも2年連続で2割近く減少した。しかし被害者の88%は60代以上で、そのうちの77%を女性が占めることがわかっている。
また、被害額が大きいのはオレオレ詐欺だが、手口の多様化が進み、特に架空請求詐欺の被害は2割以上増え、電子マネーで支払わせる方法が一昨年の5倍も増えている。
「振り込め詐欺のコンビニ利用は増加傾向にあります。なぜなら、宅配便もATMも使えて、電子マネーも購入できる、詐欺グループに便利な場所だから。最近は、金融機関の窓口でお金が引き出しにくくなったため、お金の受け渡しも上京型や手渡しが多くなり、高齢者をバイトと偽って受け子に仕立てあげるなど、犯人側も用心深くなっています」
※女性セブン2016年3月3日号