これまで日本に対して強硬な外交姿勢だった韓国が、年末の日韓合意で急に軟化したように見える。
韓国経済界から「日韓通貨スワップ協定」の復活や「韓国のTPP加入」の議論が出たり、朴槿恵大統領就任以来初の日韓首脳会談が開催されたりもした。また、昨年末、朴氏への名誉毀損で在宅起訴された産経新聞の加藤達也・前ソウル支局長の無罪判決、韓国憲法裁判所による1965年の日韓請求権協定は違憲との審判請求の棄却も今回の合意を後押しした。
こうした韓国側の動きについて、拓殖大学教授の呉善花氏はどう見ているのか。
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一連の動きを韓国による「関係修復のサイン」や「歩み寄り」とみなす日本人は多いが、過剰な評価は禁物だ。
産経新聞の加藤氏は8か月間も出国を禁じられた。国家権力が報道の自由を奪うことは民主国家ではありえず、加藤氏や産経新聞は韓国政府を訴えるべきだ。請求権協定の審判請求も本来は、国と国が結んだ協定は遵守すべきものであり、違憲の訴えは斥けられて当然。なのに、棄却されたことで「韓国が配慮してくれた」と喜ぶのはお人好しにもほどがある。
昨年、日本が「明治日本の産業革命遺産」を世界文化遺産に登録する際、韓国は朝鮮半島出身者が「強制労働(forced labor)させられた」という表現にこだわり、日韓交渉が難航した。
擦り合わせのため開かれた日韓外務次官級協議の後、日本のメディアは韓国がこの表現を使わないことを受け入れたとして、「韓国がすり寄ってきた」「話し合いで解決した」と報じた。国内に楽観ムードが広がるなか、私は「韓国が折れるなんてありえない」と確信していた。
案の定、土壇場で韓国の文書に「forced labor」との表現があるとわかり、日本は「騙された」と大慌てした。何とか「forced to work(働かされた)」との婉曲な表現で折り合ったが、海外メディアは日本が「奴隷労働」「強制労働」を認めたと報じた。戦時中の日本の非道さをアピールするという、韓国の筋書きどおりの成り行きだった。
今回の合意も海外の主なメディアは「20万人のアジア人女性を日本軍が強要して性奴隷とし、人権を蹂躙した事実を日本政府が認めて日韓合意をした」と報じた。