中国では習近平国家主席が主導しての「反腐敗運動」による汚職取り締まりが厳しさを増しているが、中国人民解放軍内部で汚職摘発の「密告電話」が初めて設置されたことが明らかになった。軍機関紙「解放軍報」が報じた。
習氏は軍の20万人削減や7大軍区から5戦略区への改編、軍中枢の4総部の15の組織への分散化など軍の大改革に乗り出している。その狙いは、軍最高幹部である中央軍事委主席である習氏への軍の権限の集中であることは明らかだ。軍内の密告電話設置などによる反腐敗運動の強化で、一気に習氏への反対派を一掃したいとの思惑が見え隠れしている。
軍内では反腐敗運動で、軍内制服組トップを務めた郭伯勇、徐才厚の両中央軍事委副主席経験者が摘発されるなど、2012年秋の習近平指導部発足から昨年末までの間に、中将以上の幹部5人を含む軍幹部47人が失脚している。そのうち、2014年の1年間で摘発された少将級以上の幹部は16人で、腐敗摘発は軍中枢にまで迫っている。
中国紙「法制晩報」によると、摘発された47人の幹部の内訳は地方軍区の旧7大軍区では24人。現在のミサイル部隊である旧第2砲兵部隊幹部が3人、海軍では北海艦隊の副参謀長、軍の研究・教育機関幹部としては国防大学や軍事科学院などの幹部7人が含まれている。
軍中枢部門である旧4総部では総参謀部の幹部が1人、総後勤部は3人、総装備部ではトップの李明元部長がそれぞれ失脚している。
習近平国家主席(中央軍事委主席)は昨年11月に北京で開催された中央軍事委改革工作会議で「軍隊の規律や巡視、会計検査、司法監督の独立性と権威性の確立などの問題を解決するため、腐敗現象が蔓延するような軍内の土壌を変えていく必要がある」と発言。そのうえで、新たな軍事委規律検査委員会を設置し、各戦略区や新設された15の部局に腐敗問題を摘発する巡視グループを派遣することなどを明らかにした。
このため、北京の外交筋は「今回の密告電話もその一環であり、習氏は自身の軍権強化のため、反腐敗運動をうまく使って、江沢民、胡錦濤という両元主席に連なる勢力の追い落としを図ろうという思惑が働いているのは間違いない」と指摘する。