『トイ・ストーリー』『ファインディング・ニモ』など、世界中で大ヒットした映像制作会社、ピクサー・アニメーション・スタジオ。この3月には、恐竜と少年の友情と冒険を描いた『アーロと少年』が公開される。
そのプロデューサーがデニス・リームさん。えっ、女性? どんなセレブ? と身構える記者の前に現れたのは――。
――いきなりですが、プロデューサーって、どんなことをするのですか? わかるようで実はよくわからないので教えてください。
まずは、“監督のビジョンの実現のためのお手伝い”と言ったらいいでしょうか(と体を乗り出し、微笑む)。ひとつの作品にかかわる何百人ものスタッフのひとりひとりがベストを尽くし、持てる力を発揮できるよう環境を整える。
あとは予算やスケジュールの管理、首脳陣に進捗状況を報告したり、声優を選んだり、問題があれば交渉にあたるなど、細かい作業もありますよ。
――それは幅広いですね~。正直、雑用係!? みたいなことまでありますね。それにしても、なぜプロデューサーになろうと思ったのですか? 監督ではなくて…。
大学時代から映画界で働きたいという、強い希望を持っていました。最初はカメラ助手、CMや音楽のプロモーションビデオの仕事もしましたよ。
やがて、製作の課題にぶちあたった時、それをどうクリアするかを考えることも多くなって。そんな、映画にかかわるあらゆることを調整してつなげていく仕事って、まるでパズルの謎を解くよう。いつしか、そんな仕事にやりがいを見出したのです。
――それがプロデューサーという仕事だったんですね。
はい。その後、特殊効果の会社に入ってそこの仕事が楽しくてたまらなくなりました。特に、視覚革命を起こしたといわれる最初の『ジュラシック・パーク』(1993年・スティーヴン・スピルバーグ監督総指揮)の製作に携われたのは、大きかったですね。
――それはすごい!
日本の映画界だと、あまり女性のプロデューサーはいないかも。こうしたデジタルを駆使した作品はなおさら。よほど実力がないと…。ピクサーにはプロデューサーは8人いますが、そのうち5人が女性なんですよ!
――知りませんでした! いずれにしても狭き門。ピクサーに入って成功するには、資質や必要条件があるんじゃないですか?
そうですね。いくつか考えられますが、まずひとつは、“思いきり好きなことをする”かしら。ある意味私は、楽しいことだけやってきたんです。得意・不得意を見ながら、興味と情熱で仕事を選んできただけで、お金や会社で仕事を選んだことはありません。