〈血圧が高めの方に〉〈脂肪の吸収を抑える〉〈骨の健康が気になる方に〉……。近ごろ商品パッケージにこんな文言が書かれている食品が増えたのにお気づきだろうか。
これらは健康への働きを表示できる新たな保健機能食品として昨年4月より登場した「機能性表示食品」だ。
保健機能食品といえば、すでに特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品が数多く売られているが、機能性表示食品はそれに続く“第三の公的制度”として認められたもの。お茶やヨーグルトなどトクホでもお馴染みの商品だけでなく、ウインナーやサバ缶といった加工品、もやし、みかんなどの生鮮品まで対象は食品全般にわたる。
消費者庁のウェブサイトで発表されている機能性表示食品の届出一覧(2月23日時点)には、受理された225点(うち2点は撤回)の食品がズラリと公開されている。
なぜ、ここまで増えたのか。ジャーナリストの小泉深氏が解説する。
「メーカー(事業者)にとっては、食品に含まれる成分が具体的にどんな健康増進に役立つのかを明記できれば、自社商品の訴求力が高まりますし、売り上げアップに繋がります。
ただ、これまでは新商品のトクホ認可を取ろうと思っても、有効性や安全性を確かめる国の厳しい審査を1年以上受けなければならないことや、1億円以上のお金がかかることなどから、諦めざるを得ない商品が多かった。
一方、機能性表示食品は、科学的根拠のある論文や表示内容を消費者庁に届ければ60日後に販売できるうえ、かかる費用も数百万円で済む。こうしたハードルの低さから参入メーカーが相次いだのです」(小泉氏)
しかし、審査基準の緩さから、肝心の“機能性”に疑問を呈する声が根強いのも事実。トクホでは認められなかったサプリメントが機能性表示食品で受理されたり、外部から論文の正確性を問われて届け出を自主撤回したりするメーカーが出たことも、不信感に拍車をかけた。
そもそも現制度の枠組みの中では、消費者庁は続々と届け出られる機能性表示食品の「撤回」を求める権限がないという。「あくまでメーカーや消費者の“自己責任”において成り立っている仕組み」(小泉氏)といえるのだが、このままでは消費者の混乱を招くばかり、と自らチェック体制の強化に乗り出す団体も出てきた。
消費者庁元長官の阿南久氏が理事長を務める一般社団法人「消費者市民社会をつくる会」は、食の専門家らを集めて機能性表示食品制度を検証する討論会を開催。昨年10月には科学者委員会を設置し、個別商品の評価を独自にスタートさせた。