北朝鮮は昨年から北朝鮮在住の華僑100人以上をスパイ容疑で逮捕し、裁判で懲役10年以上の判決を科したほか、一部には死刑判決で即座に銃殺された人もいる。北朝鮮当局は逮捕した華僑は北朝鮮の核実験や事実上の長距離弾頭ミサイル発射実験の情報を盗み、中国政府に流していたと主張しているという。香港の中立系週刊誌「アジア・ウイーク」が報じた。
在北朝鮮中国大使館が発表したところによると、北朝鮮には1980年代中ごろまで、2万人以上の華僑が住んでいたが、食糧事情の悪化などで2010年ごろには激減し、現段階で約3000人に減っているようだ。
北朝鮮では金正恩第一書記が2011年12月に最高指導者に就任して以来、核実験やミサイル発射実験を繰り返し行うなど、中国政府との関係が極度に悪化。これに伴い、在住華僑は監視対象とされていたという。
その後、北朝鮮が核実験の準備をしているとの情報が流れると、在住華僑の監視が強化され、中朝間を頻繁に行き来している華僑を中心に逮捕されるケースが増加した。
北朝鮮当局はこれにについて、「我が国(北朝鮮)の軍事情報などを盗んで、中国当局に報告している」と主張しており、裁判で死刑判決を受けて、銃殺刑により殺された華僑も10人以上いるとの情報もある。
このような報道について、在平壌の李進軍・中国大使は声明を発表し、「いわゆる『スパイ』や、『100人以上の華僑逮捕』というのは全くのデマだ」と前置きしたうえで、「華僑は朝鮮人民同様、朝鮮経済社会発展と社会主義の建設に多大なる貢献を行っており、中朝の伝統的な友誼の発揮と継続に重要な働きをしている」とコメントしている。
在北京のジャーナリストによると、北朝鮮在住の華僑は親族訪問で中朝間を頻繁に往復しているとのこと。子供を中国に大学に通わせている者も多く、北朝鮮当局から見れば、不自然で、「スパイ容疑」をかけるケースも出ているようだという。
「特に、金正恩政権に移行してからは中朝関係が悪化していることもあり、李大使が就任以来、金正恩氏に謁見していないことも異常事態だ。今後も両国関係をめぐるトラブルは増えることがあっても、減ることはないのではないか」
と指摘する。