かつて日本のサラリーマンは、入社した企業の社風に染まることが奨励された時代があった。不況やグローバル化という経済環境の変化で個人が重視されるようになると、社風について語られることは減った。とはいえ、社風は依然としてあり、それが会社の“活力”と連動していることも事実。日本を代表する自動車メーカーの社風を探った。
世界一の自動車メーカー・トヨタ自動車。現在の豊田章男社長以前は、創業家ではない生え抜き社長が三代続いた。
「その間、数字を追う拡大路線を続けたが、章男社長が就任してからは大量のリコールを出すなど苦難の連続だった。章男社長はいま、“原点回帰”を目指している」と語るのは、自動車業界に詳しい経済ジャーナリストの福田俊之氏。
「かつては地元愛知出身の社員が多く“クルマ愛”も強かったが、いまは高学歴社員ばかりで自動車はそれほど好きではない社員も多い。章男社長に話を聞くと、『今年はクルマ好きの新入社員が多くてうれしかったよ』という感想が出るほどだ。
自動車メーカーというよりも、グローバル企業としてのトヨタに入ったという意識が強いのだろう。だからこそ、章男社長が原点に返って『もっといいクルマをつくろうよ』と号令をかけている。そのためには“尖った社員”を生み出したい。いまはその途上にある」(福田氏)
もちろんトヨタにも社の方針に異論を持つ社員がいるが、ひとたびスーツにバッジを着ければ、会社のために尽くすことができる。
「社長が『この指止まれ!』といえば、即座に集まれるまとまりの良さはトヨタの最大の特徴であり強みだ」(福田氏)