国内

安倍首相 サミットで米露を和解させる外交的勲章に野心

米露和解に野心を見せる安倍晋三氏

 安倍晋三首相は、5月26~27日に開催される伊勢志摩サミットで議長を務める。関係者や経済アナリストの間では「サミットの最優先テーマは経済問題。主要国が経済協調することで世界同時株安を食い止め、世界経済をどう安定させるかは議長の手腕にかかっている」と期待されているが、実は安倍首相の視線は経済とは全く別の野心に向けられている。

 ウクライナ問題やシリア問題などを巡って対立を深め、まさに「新冷戦」ともいえる状態にある米露を和解させるという外交的勲章である。

 安倍首相は2016年度予算案が成立する見込みの3月末からサミット準備外交を展開する。まず3月31日からワシントンで開かれる核安全保障サミットに出席するため訪米。ゴールデンウィークには英仏独など欧州のサミット参加国を訪問するが、「その帰路、ロシアに立ち寄ってプーチン大統領との首脳会談を調整している。日程は5月6日が最有力」(外務省関係者)とされている。

 ロシアは2014年のクリミア併合(※注)で欧米から経済制裁を科せられ、サミットへの出席を拒否されている。首相の準備外交の主眼はそのプーチン氏を伊勢志摩サミットにゲストとして招待し、米国をはじめG7諸国との歴史的和解を実現させることにある。

【※注/2014年3月、ウクライナ南部のクリミア自治共和国で住民投票が行なわれ、その結果ロシア編入が決まった。欧米諸国は事実上、ロシアの軍事介入による領土拡大だと批判した】

 時事通信モスクワ支局長や外信部長を務めた名越健郎・拓殖大学海外事情研究所教授が語る。

「ロシアは現在、欧米による経済制裁と原油価格低下で経済的に困窮の極みにある。制裁は半年おきに延長され、7月に期限が切れる。おそらく5月の伊勢志摩サミットでは制裁延長問題が議題に上がるはずです。

 サミット議長の安倍首相は首脳会議の議事運営や声明採択に大きな権限を持っている。プーチン大統領が安倍首相との会談を呼び掛けてきたのは、制裁緩和への仲介役を期待しているからなのは間違いない」

 ロシアのインターファクス通信も2月16日、谷口智彦・内閣官房参与のこんな見通しを伝えている。

〈安倍首相はロシア大統領にG7諸国の抱く憂慮を伝える意向だ。同時にG7諸国首脳にプーチン大統領の考えを伝える意向だ。安倍首相はこれこそ自分の仲介者としての役どころ、自分の議長国としての意義だと考えている。つまり、ロシアとG7をつなぐ「橋」というわけだ〉

関連記事

トピックス

東日本大震災発生時、ブルーインパルスは松島基地を離れていた(時事通信フォト)
《津波警報で避難は?》3.11で難を逃れた「ブルーインパルス」現在の居場所は…本日の飛行訓練はキャンセル
NEWSポストセブン
別府港が津波に見舞われる中、尾畠さんは待機中だ
「要請あれば、すぐ行く」別府湾で清掃活動を続ける“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(85)に直撃 《日本列島に津波警報が発令》
NEWSポストセブン
宮城県気仙沼市では注意報が警報に変わり、津波予想も1メートルから3メートルに
「街中にサイレンが鳴り響き…」宮城・気仙沼市に旅行中の男性が語る“緊迫の朝” 「一時はネットもつながらず焦った」《日本全国で津波警報》
NEWSポストセブン
津波警報が発令され、ハワイでは大渋滞が発生(AFP=時事)
ハワイに“破壊的な津波のおそれ” スーパーからは水も食料品も消え…「クラクションが鳴り止まない。カオスです」旅行者が明かす現地の混乱ぶり《カムチャツカ半島地震の影響》
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月16日、撮影/横田紋子)
《モンゴルご訪問で魅了》皇后雅子さま、「民族衣装風のジャケット」や「”桜色”のセットアップ」など装いに見る“細やかなお気遣い”
夜の街での男女トラブルは社会問題でもある(写真はイメージ/Getty)
「整形費用返済のために…」現役アイドルがメンズエステ店で働くことになったきっかけ、“ストーカー化した”客から逃れるために契約した「格安スマホ」
NEWSポストセブン
牛田茉友氏はNHKの元アナウンサーだったこともあり、街頭演説を追っかける熱烈なファンもいた(写真撮影:小川裕夫)
参院選に見るタレント候補の選挙戦の変化 ラサール石井氏は亀有駅近くで街頭演説を行うも『こち亀』の話題を封印したワケ
NEWSポストセブン
大谷家の別荘が問題に直面している(写真/AFLO)
大谷翔平も購入したハワイ豪華リゾートビジネスが問題に直面 14区画中8区画が売れ残り、建設予定地はまるで荒野のような状態 トランプ大統領の影響も
女性セブン
技能実習生のダム・ズイ・カン容疑者と亡くなった椋本舞子さん(共同通信/景徳鎮陶瓷大学ホームページより)
《佐賀・強盗殺人》ベトナム人の男が「オカネ出せ。財布ミセロ」自宅に押し入りナイフで切りつけ…日本語講師・椋本舞子さんを襲った“強い殺意” 生前は「英語も中国語も堪能」「海外の友達がいっぱい」
NEWSポストセブン
大日向開拓地のキャベツ畑を訪問された上皇ご夫妻(2024年8月、長野県軽井沢町)
美智子さま、葛藤の戦後80年の夏 上皇さまの体調不安で軽井沢でのご静養は微妙な状況に 大戦の記憶を刻んだ土地への祈りの旅も叶わぬ可能性も
女性セブン
休場が続く横綱・豊昇龍
「3場所で金星8個配給…」それでも横綱・豊昇龍に相撲協会が引退勧告できない複雑な事情 やくみつる氏は「“大豊時代”は、ちょっとイメージしづらい」
週刊ポスト
NYの高層ビルで銃撃事件が発生した(右・時事通信フォト)
《5人死亡のNYビル乱射》小室圭さん勤務先からわずか0.6マイル…タムラ容疑者が大型ライフルを手にビルに侵入「日系駐在員も多く勤務するエリア」
NEWSポストセブン