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韓国の反日映像作品「野蛮な日本人の姿」拡散ツールに

2月公開の慰安婦映画『帰郷』(予告編。YouTubeより)

 戦後70年の昨年、韓国では多数の反日映画やドラマが制作された。今年もその勢いは止まらず、韓国国民の「反日感情」を刺激する映像作品が続々と世に送り出される予定だ。ブームは「日本の統治時代」を背景にした作品だが、歴史物の作品も存在する。在韓ジャーナリストの藤原修平氏がリポートする。

 * * *
 歴史物では、豊臣秀吉の朝鮮出兵を題材とした作品も根強い人気を誇る。昨年2月から8月まで放送されたKBSドラマ『懲毖録(チンビロウ)』では、文禄・慶長の役をテーマに日本軍の“狂気”と“蛮行”があらゆる場面で描かれた。

 たとえば豊臣政権の武将、宇喜多秀家率いる軍が落とした漢陽(現・ソウル)では、「1593年9月24日、漢陽に駐屯していた日本軍は朝鮮の良民を大虐殺する蛮行を犯す」というナレーションのもと、朝鮮の人々を手当たり次第に虐殺するシーンが登場。

 一方、平壌城を巡る日本軍と朝鮮軍の攻防戦では、「日本側の大敗」といった史実と異なるストーリーも盛り込まれた。韓国の人々はしばしば、秀吉の朝鮮出兵を日本の“連戦連敗”と主張し「李舜臣の日本水軍撃退」や「勇猛な朝鮮人義兵による迎撃」で日本が敗走したというが、真実はどうか。ちなみに、中国の正史『明史・朝鮮伝』は「十万の将兵と百万の兵糧を喪失した明と属国の朝鮮に勝算はなく、秀吉の死により戦乱が終結した」と総括している。

 秀吉の朝鮮出兵がテーマのドラマは今年も放送される。現在、制作が進められているのは韓国KBSと中国CCTVの合作による『三国大戦 壬申倭乱1592』だ。キャストには韓国の人気若手俳優と女性アイドルを配し、韓流ブームに沸く中国の若者を抗日歴史ドラマに取り込もうという意図が読み取れる。

 また映画では、1930年代に日本の軍国主義に対抗した抗日活動家を描く『密偵』の公開が予定されている。こちらも中国との合作によるもので、主演には中国でも人気の高い韓国の国民的俳優、ソン・ガンホが抜擢された。なお、今年後半には抗日活動家・安重根が主人公の『英雄・安重根』が封切り予定だ。同作品は中国のネット放送会社が制作費500万ドルを投じ、韓国人監督がメガホンを取る。

 近年、中国をはじめとするアジア諸国では、韓国の反日作品がネットを通じ放送される機会が増えてきた。反日エンターテインメントが韓国人の自己満足のためだけではなく、「野蛮な日本人の姿」をアジア諸国に拡散するためのツールとして利用されていることも忘れてはならない。

【PROFILE】1973年岩手県生まれ。韓国、中国東北部を中心に東アジア地域の取材を行う。2009年より韓国在住。

※SAPIO2016年3月号

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