韓国ではいまなお、「反日感情」と「無知による不安」がブレンドされた日本の被災地に対する不当な差別が、平然とまかり通っている。東日本大震災から間もなく5年。韓国・ソウルで2月20~21日に開かれるはずだった震災復興のPRイベントが直前になって開催中止に追い込まれた。
このイベントは外務省が主催。青森、宮城、福島など4県が参加して各地の特産品を紹介する予定だった。
「被災地の復興をPRし、震災後の風評被害を払拭することを主な目的としたイベントです。すでに香港と上海で開催実績がある」(外務省報道課)
しかし開催当日、開催地であるソウル市城東区が「会場の使用を許可しない」と外務省に通告し、突然のイベント中止となった。原因は韓国のいくつもの市民団体が「原発事故で放射能に汚染された食物を食べさせるのか」という抗議活動を行なったことだ。
「『緑色連合』『市民放射能監視センター』など左翼系の市民団体がイベント前日に反対声明を出した。同じく左翼系の『ソウル放射能安全給食連帯』は、“イベントの日に直接行動し、イベントが開催されてはならないことを韓国政府に代わって市民に知らせる”と物理的な行動を示唆した。これらの圧力にトラブルを怖れた自治体がイベントをキャンセルしたようだ」(韓国人ジャーナリスト)
また事前に一部の日本メディアには、環境保護を掲げる韓国の政党から、〈福島産の菓子で挑発する日本政府。悪い風評と憶測を広めるのはあなたたちだ〉とのメールが送られていた。
イベント参加を予定していた自治体が「楽しみにしていたのに残念」(宮城県国際経済・交流課)と戸惑うなか、最も痛切な悲鳴をあげるのは福島県だ。
「とても残念です。輸入制限されている食品は持参せず、韓国国内で流通している福島の日本酒やお菓子を配布する予定でした。細部まで気を遣って準備していたのですが……」(福島県観光交流課)
福島県の内堀雅雄知事は2月22日の会見で「風評被害の解消に特効薬はなく、長い時間がかかることを覚悟している」と唇を噛んだ。
※週刊ポスト2016年3月11日号