芸能

樹木希林広告の「死ぬときくらい好きにさせてよ」の真意

「死んだら、ただおしまい、がいい」と語る樹木希林

 花を握りしめて、池の水面に揺られて浮かぶ樹木希林(73才)――。

 これは1月5日、全国紙に掲載された宝島社の企業広告。「死ぬときぐらい好きにさせてよ」というキャッチコピーとともに綴られた文章が今も話題になっている。樹木希林は全身をがんにおかされている。そんな彼女がこのような広告に登場したことが話題となった。

「いかに死ぬかは、いかに生きるかと同じであり、それゆえ、個人の考え方、死生観がもっと尊重されていいものではないか」(宝島社広報)という意図で制作されたというこの広告の撮影現場で、樹木は、こんな思いを明かしていた。

「先に逝く人は、本当は死んでいく姿を見せていかなければならないのに、それが見せられなくなっている。死を実感できなくなっているから、死が怖くなってしまっているのではないかと思います。親しい人の死が身近に見られない今の世の中は、ちょっと不幸な時代になったのかなと。損しているなと思いますね。

 死ぬということは悪いことではない。当たり前のこと。生きているのも日常、死んでいくのも日常。私はちゃんと見せていきたい。そういうことを伝えるのも、ひとつの役目かなぁと思い、(この仕事を)やらせてもらうことにしました」

 思想家の内田樹さんは、樹木のキャッチコピーに、「人は死ぬ間際にいろんなことを言い出すもの」と、昨年暮れに亡くなった母の最期を語ってくれた。

「母は全身にがんが転移して11月初めに“私、11月15日に死ぬから”と勝手なことを言い出したんです。“その時期なら暑くも寒くもなくて、葬式に来る人の足下がいいから”って。“いや、人間、自分の死ぬ日は決められないよ”と笑ったんですけれど、今思うと、それは母なりの甘えの表現だったと思います。

 母は“早く死にたいくらい痛い”ということをそういうふうに言い換えて、自分の死について周囲とやりとりすることを求めていた。ぼくたちがその言葉でびっくりしたり、慌てたりすることに、母は消え行く身の最後の手応えを感じようとしていたんだと思います。

 だいぶ前に亡くなった父も、常識人でしたけれど、最後は“葬式はするな、戒名をつけるな、坊主を呼ぶな”って無理難題を言って家族を当惑させましたけれど、あれも父なりの家族への甘えだったのかなと思います」

 心理学では“裏面交流”といい、無理難題を言って、相手がどれくらい許してくれるかによって、自分に対する愛を確かめようとする。

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