2013年、日本を訪れる外国人旅行客(インバウンド)が1000万人を突破。そんな中、外国人観光客の希望に沿って東京近郊を無償で案内するボランティアガイドを目指す人が年々増えている。実際、英語を話せるようになって人生が一変した、と語る人がいる。
「英語で話している時の自分は、人が変わったように明るくなるんです」
そう話す村上純子さん(54才)は、大学受験までは勉強はしていたが、それきり英語はきれいさっぱり忘れていた。それが再び英語とかかわりを持つようになったのは、娘が中学に入り英語の授業を取るようになったから。娘の横で、英語学習を再開した。
もともと英語が好きだったのもあり、学習は10年間継続。その成果をアウトプットしたいと探していたところ、外国人観光客の希望に沿って東京近郊を無償で案内する「東京フリーガイド」の存在を知った。「これだ!」と飛びつき即入会。以来8年間、のべ150組の案内をしている。
「もともと人と話すのが苦手で、パート先の若い人や年配のかたとも何を話したらいいのか、どんな言葉遣いをしたらいいのかわからず、人間関係では壁を作ってしまうほうでした。
家でも無愛想で、いつも苦虫をかみつぶしたような顔でムスっとしている鬼嫁。それが、外国人を前にすると、不思議とスイッチが切りかわって、すごくオープンになれるんです。
ガイドを通じて友人も増え、フェイスブックで繋がったり、数年後に個人的に会いに来日してくれたり。先日は60代の日系アメリカ人のかたと2人で温泉旅行に行きました。
英語は敬語がないから、どの年代のかたともフランクに話せ、壁がなくなるんでしょうね。日本人では考えられないことです」
今、村上さんの生活はボランティアガイドを中心に回っている。
「どこそこでイベントがある、どこそこの店がおいしいと聞けば、今度のガイドで案内できないかと下見に行ったり、すぐにガイドに結びつけて考えます。もともとおいしいものを食べ歩くのが好きなので、趣味がガイドに直結しているんですね。
今ではこんなにイキイキしていますが、もしガイドを始めていなかったら、特に目標もなくこれといった趣味もなく、家事が好きなわけでもないので、不満を抱えながら毎日をやり過ごしていたと思います」
東京フリーガイドで理事長を務める川本佐奈恵さんも英語で人生を変えた1人だ。32才でゼロから英会話を勉強し続け、今では英会話スクールや英会話カフェも運営している。
「英語は、それを使うことで自己改革にもなるんです。私の場合、他人を素直に褒めることができるようになりました。特にアメリカ人は人を褒めるのが上手で、まず褒めることから会話が始まる。それを自分の中にも取り入れたら、人のいいところを見るようになり、だんだん人との関係がスムーズになりました。
また、常識や価値観が相手と違っても、それは外国人同士だと当たり前なので、日本人同士でも違う考えを否定せず、すんなり受け入れられるようになりましたね」
※女性セブン2016年3月17日号