2016年の外国為替市場における最大の注目は、アメリカの追加利上げが、いつ、どのタイミングで行なわれるのかだろう。為替のスペシャリスト、松田トラスト&インベストメント代表の松田哲氏が解説する。
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外国為替市場にも中国バブルの崩壊が波乱要因として暗い影を落としている。中国の株価と不動産価格が下落し、理財商品を元手にした多くの開発投資も頓挫している。中国の投資家たちがシャドーバンキング(影の銀行)に預けた巨額のお金は大半が消え去っており、彼らに戻ることはないだろう。
今回の中国バブル崩壊の規模は日本のバブル崩壊の規模よりもはるかに大きい。この先数年は中国経済が減衰する状態が続くと見込まれる。いずれ回復していくと思うが、可能性としては、上海総合指数1500ポイント割れもあり得るのではないか。
これまで世界経済を牽引してきた中国の力が無くなると考えると、世界経済にも深刻な影響が及ぶことを想像しないといけない。2016年の外国為替市場については、こうした中国の問題が根底にあることを常に認識しておく必要がある。
実際、年明けから中国株式市場でサーキットブレーカーが発動し、世界同時株安と金融市場の混乱を招いた。中国の危うさがあらためて顕在化し、市場心理が悪化したことを物語っていた。アメリカの追加利上げのピッチが当初予定の年4回から年2回程度に減るのではないかとの観測も強まっているが、アメリカだけの問題ではなく、潜在的に中国の減速問題があるからだろう。現状のままでは、アメリカの追加利上げのスピードは緩やかになると私も思う。
ただし、アメリカは今年必ず追加利上げを行なうだろう。「今年は追加利上げしないのでは」との見方もあるようだが、そのシナリオはないと断言する。
なぜならば、米連邦準備制度理事会(FRB)にもプライドと立場がある。昨年12月に利上げを開始した以上、米連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーの存在意義にかけても、今年は利上げを続けるはずだ。仮に3月の追加利上げを見送ったとしても、6月に追加利上げに踏み切るだろう。
※マネーポスト2016年春号