NHK連続テレビ小説『あさが来た』の視聴率が好調だが、演者の功績はもちろんのこと、そこには裏方さんたちのキラリと光る活躍がある。
役者がかぶるかつらを担当する「かつら部」には、俳優の頭の形に合わせたかつらを作る仕事と、かつらを結い上げて俳優に被せる仕事がある。かつらチーフ・西口富美子さん(元禄フィルム)の仕事は、後者だ。西口さんがこだわりの仕事ぶりを語る。
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櫛は20本くらい持っていて、結い方によって使い分けています。時代考証に合わせて髪を結うだけにはしていません。
もちろん、文献を読んで、その当時の最低限守らなければいけない様式は守っています。私は、「かつらはその人となりを表す大切な体の一部」だと思っています。
例えば、山王寺屋のお菊さん(萬田久子)の髪は、大きな丸髷です。大きすぎると笑われることもありますが、家が没落してもそのままにしています。髪飾りはなくなって少々髪が乱れても、それでも丸髷を保っている。これは、「いつかきっと山王寺屋を立て直す」と考えているお菊さんのプライドそのものなんです。
また、はつ(宮崎あおい)が使っているかんざしは、かつて母の梨江さん(寺島しのぶ)が使っていたものを受け継いで形見にした設定です。結納など大切な節目のときにだけ使おうかどうか悩んでいて、宮崎さんに相談したんです。
そしたら宮崎さんから「いつもお母さんを感じていたい」と言われたので、普段使いするようにしました。そうした細かいところに気がついていただけると、“かつら冥利”に尽きます。
ちなみに、男性のかつらはすっぽり被る物が多い。新次郎さん(玉木宏)のような場合、かつらと地肌の境目をわからなくするのも私たちの仕事です。そこには、特殊な技法を取り入れています。具体的にどうやるかは企業秘密です。
新次郎さんは、髪も色っぽく見えるように作っています。首の長い男性の場合、襟足の髱(つと)という部分を長くすると、色気が出るんです。
※女性セブン2016年3月17日号