人を癒せるのは、やはり人──そう思わずにはいられない感動のエピソードを紹介。パート勤務のシングルマザーが、親子の実話を告白します。
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夫の浮気が原因で離婚。6才の娘と2人暮らしになりました。パートを掛け持ちする生活はかなり苦しく、外食もできませんでした。
そして月日が経ち、娘は中学2年生に。ある日、その娘が私の誕生日に外食をしようと言ってくれたのです。しかも、娘が連れて行ってくれたのは、高級な割烹料理店。
「予約してあるから」と、娘は得意げに店へ入ろうとするので、私は思わず引きとめてしまいました。お金は大丈夫だと言う娘に、「まさか、悪いことをして稼いだんじゃないでしょうね」と余計な疑いをかけてしまったのです。娘は私を睨みつけると、目に涙を浮かべ、「もういい!」と、走って行ってしまいました。
そこへ、女将さんが店から出てきました。予約をキャンセルしようとすると、女将さんが静かに首を振ります。
数日前、娘がお小遣いを持って予約に来た時のこと。予想以上に料金が高く、入り口で立ち尽くしてしまったそうです。事情を聞くと、「いつも頑張っているお母さんに、感謝の気持ちを込めて、ぜいたくをさせてあげたい」と…。女将さんは、出世払いでいいからと、予約を受けつけてくれたそうです。
私は急いで娘を捜すと、近くの公園で泣いていました。娘に駆け寄り、「ごめんね」と、強く抱きしめました。私たちは店に戻り、その日は楽しい時間を過ごせました。
後日、店に料金を払いに行くと、「娘さんにいただきます」と断られました。2年後。高校生になった娘が、アルバイトをした給金で“出世払い”してくれました。
その後、私の誕生日を、その店で祝うのが、恒例となっています。
※女性セブン2016年3月17日号