4月1日から一般家庭向けの電力小売り自由化が始まる。電力の購入先を今の大手電力会社から自由に選択できるようになるが、そこで業績を伸長させるのはどんな企業だろうか。日本インタビュ新聞社代表で、経済評論家の犬丸正寛氏が解説する。
* * *
金融政策が手詰まりとなる中、7月の参議院選挙までに景気を浮揚させたい安倍政権は、成長戦略に本腰を入れると見ている。現状、円安局面への転換は期待しにくいため、名目GDP600兆円達成には内需拡大に注力しなければならない。
4月から始まる一般家庭向けの電力小売り自由化は、その起爆剤のひとつになりうる。競争で企業の設備投資が活発になり、電力料金の低下が個人消費の拡大に寄与するだろう。新エネルギーの開発・供給拡大に向けても政府はさまざまな措置を講ずると見る。関連銘柄は大いに注目されるはずだ。
そうした観点から、ガスと電力のセット販売で優位性を発揮するとみているのが、東京ガス(東証1部・9531)だ。特に、ガス販売で圧倒的な強さを持つ家庭用での期待は大きい。都市ガスおよびLPガス販売事業者42社と業務提携し、電力の供給・販売エリアは首都圏の1都7県すべてをカバー。2020年までに、自社の発電能力を現在の2倍の300万キロワットとする方針だ。
2016年3月期の第3四半期の営業利益は、原油安効果が大きく寄与し、前年同期比2.2倍の1284億1200万円と絶好調。その結果、通期業績を大幅に上方修正し、通期営業利益は前期比9.5%増の1880億円の見通しとなっている。EPS(1株当たり利益)は50.8円で、配当は年11円と増配の見込み(前期年10円)。
株価550円以下なら配当利回りが2%を超える。日銀のマイナス金利導入によって、預貯金の金利が軒並み低下しており、その点からも魅力は十分。電力株よりも安心して配当取りが狙える公益株といえよう。
※マネーポスト2016年春号