30年以上の経験を持つ為替のスペシャリストで、バーニャマーケットフォーカスト代表の水上紀行氏は、FX(外国為替証拠金取引)は4月からの年度初めの為替相場の動きには用心するよう指摘している。それはどういう意味なのか、水上氏が解説する。
* * *
新年度入りの前後に、本邦勢と外資系の駆け引きというのは恒例です。最近こそ銀行のトレーディングもそれほど活発ではなくなりましたが、その昔、邦銀各行はかなり活発にトレーディングを行っていました。
しかしそうした邦銀も9月の中間決算、3月の本決算となると、経理から損益を極力ぶらさないでほしいと要請され、もちろん顧客取引は変わらず行うものの、すぐにマーケットにつないで、損益がぶれないようにしていました。
その邦銀が動けないということを外銀勢は十分心得ていて、邦銀勢のいない薄いマーケットで、相場を一方向にどんどん持っていくなど、敢えて邦銀の鼻先にエサをぶら下げるようなことをします。邦銀勢はこれには地団太踏んでくやしがり、期末日となる3月末はまだかとイラつきます。
そしてとうとうお待ちかねの期末日がきますと、銀行によって、期の区切りになる時間が違いますが、多くは東京マーケットに前場と後場という時間制限のあった頃の後場が終わる午後3時30分が期の替わるタイミングとなり、午後3時30分ともなると雪崩を打ったように、邦銀勢はマーケットに飛び込んでいきました。
◆外銀のしたたかな利食い
実はこれが、外銀勢が邦銀勢をいたぶってきた理由なのです。この一方向に進む相場に少しでも遅れまいと、それまで動けなかったという焦りもあって、邦銀勢がガムシャラに飛び込んでくるところを、外銀勢は静かに利食い、ポジションを手仕舞っていくのです。
そうすると、マーケットには邦銀勢の一方向のポジションだけが残るため、当然それ以上に相場は前には進まなくなり、その内に偏ったポジションを巻き戻す動きとなります。そしてストップロス(損切り)を巻き込みながら、反転することになり、新年度早々、邦銀勢は結構なマイナスから始まるということが、多々見受けられました。
※マネーポスト2016年春号