過去の株式市場の値動きを見ると、月や日によってある一定のトレンドが浮かび上がってくる。特に年度末となる3月は、株価に特徴的な値動きが見られるという。投資情報サイト「株式予報」代表の中原良太氏が、過去16年の膨大なデータをもとに、株式市場の値動きのトレンドについて解析した。
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私は、毎日の市場ごとの指数や業種ごと、さらにはすべての個別銘柄の騰落率まで、2000年から2015年までの16年間にわたって蓄積された膨大なデータを分析している。いわば、株式市場の“ビッグデータ”で、この膨大なデータを紐解くと、ある一定のトレンドや、アノマリー(明確な根拠はないが、そうなることが多い経験則)が見えてくる。実は「1月は急落しやすく、2月以降、反騰態勢に入る」というのは、過去何度も起きてきたことなのだ。
過去16年間のデータを平均すると、1月の日経平均は前月末比で2.26%下落している。これは、年末に大型株が物色されやすく年末高となる反動による下落、といえるだろう。2月はその下落からのリバウンドで、平均1.46%の上昇。続く3月は1.99%、4月は0.86%の上昇となり、特に3月は、1年のうち12月に次いで高いパフォーマンスの月となっている。3月は期末の優待・配当取り、4月は新年度の買いで新しい資金が流入しやすいという背景も考えられる。
ところが5月は1.03%の下落となっている。多くの個人投資家の方もこの10年ほど、「GW明けの5月は相場が崩れやすい」と感じているかもしれないが、過去の統計からも、その傾向は確かに出ているのだ。
特に3月は興味深いデータが浮かび上がってくる。株式市場には「上がりやすい日」や「下げやすい日」があり、3月24日は過去16年、いずれの年も上昇した日なのだ。つまり、24日の始値で買って、翌日の始値で売れば、必ずプラスになったということ。過去16年間で“全勝”しているのは、1年のうち3月24日と11月4日の2日しかない。
また、3月21日は平均上昇率が1.31%と、1年のうち最も騰落率が高い。1%を超えるのは3月21日、11月4日、12月1日、10月14日、9月15日の5日で、これらは“上げの特異日”といえるだろう。
このように、3月末に21日や24日と“上げの特異日”が連続しているのは、優待や配当の権利日直前で個人投資家からの買いが入りやすいことや、3月期末直前で決算への期待感から買われやすいという分析ができる。
では、中間期の配当・優待取りの時期となる9月はどうか。9月15日、18日は過去16年の勝率が8割以上で、15日、19日などは騰落率も高いが、その一方で月別のデータを見ると7~10月は下落しやすく、全指数(日経平均、ジャスダック指数、マザーズ指数)とも過去16年間の平均騰落率はマイナスとなっている。全体相場の影響も考えると、1年のうち最大のチャンスは3~5月といえそうだ。
また先述した通り、個人投資家の中には「GWの前後は相場が崩れやすい」というイメージを持っている人も多いだろう。それはある意味で正しいのだが、一方でそうでない面もある。
たしかに、GWの連休中に海外で突発的な悪材料が出てしまった場合、日本市場は閉まっていて売ることができない。そのため連休前にいったん手仕舞うことで、株価が下がりやすい側面がある。海外の機関投資家も連休前にはポジションを縮小し、それが株価下落にも繋がりやすい。
しかし、GW直前の大引けで日経平均を買って、GW明けの寄り付きで売ると、過去16年間の勝率は61%、平均で1.1%も上昇している。データ上は、連休前に売られた株は連休後にしっかりと値を戻しており、相場が崩れるのはGW明け以降となるのだ。
以上のように、年前半の日経平均の値動きを過去のデータから分析すると、「1月に底を打った後、2月から4月にかけて上昇を続け、5月のGW明けまでは比較的堅調。しかし、GW明け以降は値下がりしやすい」という月ごとの明確な傾向が見て取れる。加えて、1日単位で見ても“上がりやすい日”がある。株式ビッグデータから導き出されたこれらのアノマリーは、ぜひ投資に活かしたい。
◆中原良太(なかはら・りょうた):1990年生まれ。2015年Yahoo!ファイナンス株価予想達人「ベストパフォーマー賞」を受賞。過去の株価データを徹底分析し、手数料や注文方式までこだわったシステムトレード戦略が人気を博している。
※マネーポスト2016年春号