ヤクザ、マフィア、ギャング、黒社会と呼び名は違えども、世界各国に存在する暴力組織。時に公権力と激しく対峙しながらも、彼ら闇勢力は国家と常に密接な関係を築いてきた。
悪名高き中国の黒社会(マフィア)は1970年代末からの改革開放路線とともに増加し、中国大陸には100万~150万人の構成員がいる。
「あまり勢力を拡大すると共産党に潰されるので1集団の規模は小さく、数十人から数百人程度。反社会性が強く、売春、武器密売、密航などあらゆる犯罪を働く」(筑波学院大学・石田収教授)
黒社会は賄賂や暴力など様々な手段を使い権力と癒着する。その象徴が2014年3月に逮捕された四川省の大物実業家・劉漢だ。同省の政治協商会議の常務委員に選出され、政財界に君臨した劉漢は実は黒社会のボスであり、過去に殺人など凶悪犯罪に関与していた。党幹部や公安関係者を賄賂で買収する一方、自動小銃や手榴弾などで武装した「地下武装組織」を従え、公共事業の入札競合者を恫喝し地域の利権を独占していた。
劉漢が逮捕されたのは後ろ盾だった党最高幹部の周永康が習近平との政争に破れたからであり、周の失脚がなければ四川の政財界に君臨し続けたはずだ。中国の地方紙『新文化報』は〈黒社会のボスの約4割は不動産業界と深くかかわり、約2割は政治家の身分を有する〉と指摘しており、中国全土で劉漢クラスのボスが跋扈すると推定される。
SAPIO2016年4月号