3月5日、午後1時過ぎ、国会議事堂前にプラカードを持った50人ほどの男女が集まった。テレビクルーも20人ほどおり、デモが始まろうとしていた。いや、デモではなかった。
確かにプラカードを掲げているものの、子連れも多く、誰も叫ばず、その場に立ったり、座ったり、思い思いのスタイルで、そのまま互いの悩みを語り合う人もいた。そんななか、国会に向かって真っ直ぐプラカードを掲げて佇む女性がいた。彼女は今回の国会前スタンディングをSNSで呼びかけた女性だった。
すべての始まりは2月15日、ネットの匿名ブログに投稿された、《保育園落ちた 日本死ね!!!》から始まる書き込みだった。
投稿者は都内に住む30代前半の女性で、3月で1才になる息子がいる。育児休暇明けに働こうとしたら保育園に落ち、怒りのままに書き込んだという。名もなきママの「絶望の声」は大きな話題となり、ツイッターで続々と拡散。
翌16日にNHKのニュース番組で、ツイッター急増ワードとして報じられたのを皮切りに、連日、新聞やテレビで大きく報じられ、本誌も3月10日号でママの本音とともにお伝えした。
その怒りの声は、投稿からわずか2週間後の2月29日、国会へ届く。自身も5才の男児の母である民主党・山尾志桜里議員(41才)は、保育園を巡るこの社会現象について衆院予算委員会で安倍晋三首相(61才)に公開質問をした。
女性セブンはもちろん、全国のママたちが、首相からの善処を期待した。しかし、それは予想だにしない言葉で裏切られた。
「そのメール(書き込み)について私は承知していません」
前述したとおりの、この大きな社会現象を、私たち日本の首相は「知らない」という。新聞も、テレビも、インターネットも、見ないし読まない、ということなのか。そして「匿名である以上、実際本当に起こっているか、確認しようがない」と続ける。
さらに山尾議員の発言中には、与党議員から、「中身のある議論をしろ!」「誰が書いたんだよ!」と激しいヤジが飛び交った。山尾議員が振り返る。
「ブログを読み、“保育に悩む母親の本音が出ている”と強く感じて国会で採り上げました。ところが与党から『出典が不明な資料はNG』と注意され、委員会室にブログの文言を写したパネルやペーパーを持ち込めなかった。仕方なく口頭で文言を紹介したら、与党議員のヤジでかき消されました。私が経験したなかで、最大のヤジでした」
※女性セブン2016年3月24日号