スナック菓子の大手カルビーの経営を61歳でまかされるや、翌年には営業利益率を倍増、さらに6期連続最高益をはじき出した松本晃氏は同社の会長兼CEO(最高経営責任者)だ。京大大学院を卒業後、伊藤忠商事とその子会社で活躍、1999年にジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人社長に転じた際にも利益を大幅に伸長させた。「負け」知らずの「あきんど会長」に作家の杉山隆男氏が迫った。
──休みでも松本さんの中からは仕事が離れないんですね。
松本:でしょうね。仕事以上におもしろいものが見つからないんですよ。
──じゃあ、カルビーのあとはどうされるんですか。
松本:ねえ、どうするんでしょうか(笑い)。最初カルビーは4年したら辞めると言っていたんですよ。5回裏ツーアウト満塁のピンチの救援で中継ぎを頼まれて、仕方がないからって。投げたら終わり、と思っていました。
ところが上場して株価が10倍に上がった。すると投資家さんたちが「あんたがいるから上がってるんだ」「辞めたら困る」と、おだててくれる。そうして、ついつい3年プラスしちゃったわけです。でも、ポテトチップスだって賞味期限は4か月なので、自分の賞味期限もぼちぼち切れているのかなって思っていますよ。
──社員の皆さんや創業家に、もうちょっといてくれとお願いされたらどうします?
松本:いやいや、そんなものは本気で言ってるかどうかわかりませんよ。世の中っていうのはいつもそうですよ。「あいつはよくやってくれてる」と言う一方で、逆に「あいつはいつまでやっているんだ」って思ってる人も、ちゃんとおるんですね。だから、終わりは自分で決めるしか仕方がない。その腹決めですね。で、問題は、辞めたときに、あとどうするのかと。
──それだけ仕事が大好きなのに……。
松本:すると、もう一つやってもいいかなという気はある(笑い)。ただ、僕は絶対に失敗しないですよ。失敗しない最大の理由は、失敗するような馬には乗らないから。学生時代にやっていた競馬は負け続きでしたが(笑い)、ビジネスは勝ち馬にしか乗らない。
カルビーを引き受けたのも、この会社は勝つに決まっているから受けた。何でもかんでも受けるということはありません。いくら何億円のお金を払うと言われても、そんなものには興味はありません。