書店にも多くの「アドラー心理学」関連書籍が並ぶ
「アドラー心理学」に関心が集まっている。『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社)が大ヒットしたことを契機に、書店では特設コーナーが組まれたり、企業や教育現場でもアドラーに関するセミナーが開催されたりする大盛況ぶりだ。
「あらゆる悩みは対人関係の悩みである」とアドラーは説く。これは、アドラー心理学において重要な概念である。人とかかわれば、必ず摩擦が起こるからだ。しかし、対人関係を離れて孤独でいては幸せになれない、というのも間違いないだろう。
このことを説明するうえでは「劣等感」が欠かせない。例えばあなたが、自分の身長が低くて悩んでいたとしよう。このような悩みを持つ人は、身長が低いことそれ自体を問題にしているというより『身長が低くてモテない』という対人関係の悩みを持っていると考えるのだ。
身長が低いということは、人として欠けていたり、劣っていたりする「劣等性」を客観的に示すものではない。あくまで主観的な「劣等感」にすぎない。つまり、背が低いことをモテない理由にして、対人関係を避けている、とアドラー心理学では考えるのである。
ちなみに、劣等感という言葉を、現在使用されている意味で初めて用いたのはアドラーである。
では、この対人関係の悩みから解放されるにはどうすればいいのか。キーワードになるのが、アドラー心理学の考え方、「課題の分離」である。『嫌われる勇気』の共著者の一人で、日本アドラー心理学会顧問の岸見一郎氏が語る。
「他人が自分をどう思うかは他人の課題であって、自分ではどうすることもできないと心得よ、という考え方です。それが分かれば他人の評価に悩まず、気にしてもどうにもならないと、心を余計な重圧から解放することができるのです」