第39回日本アカデミー賞授賞式。そこで、最優秀主演男優賞に輝いたのは、『母と暮せば』(山田洋次監督)で吉永小百合の亡き一人息子を演じた嵐の二宮和也(32才)だった。心からの笑顔をたたえて、目を潤ませてスピーチに臨んだ二宮。これまで、「演技派」といわれてきた彼だけに、思いもひとしおだったのではないだろうか。
二宮の同世代を見渡すと、“憑依型”ともいわれる超演技派俳優が顔を揃えている。小栗旬(33才)、山田孝之(32才)、綾野剛(34才)、藤原竜也(33才)、生田斗真(31才)…。
「元来仲のいい彼らは、飲みに行けば朝まで演技論をぶつけ合うのが日常です。役の解釈やセリフの言い方はもちろん、食事の仕方、目の動かし方まで、あーでもない、こーでもないと延々と話し続けています。嵐でいえば、松本潤さん(32才)もその仲間ですね」(芸能関係者)
そうそうたる同世代の俳優陣の中にいて、役作りさえしない二宮は対極の男といえる。
周囲の俳優と二宮の温度差を示す1つのエピソードがある。映画『硫黄島からの手紙』(クリント・イーストウッド監督 2006年公開)の撮影が始まる前のこと。二宮が役者仲間と食事をしていると、どこからともなくイーストウッドが日本人のオーディションを予定しているという噂話が出た。
「1カットでもいいから出たい派」と「セリフのある役どころを目指す派」が言い争いの果てにけんかを始めた。
興味がない二宮はただ1人、飯を食い続けていた。後日、ジャニーズ事務所社長のジャニー喜多川氏がライブ後の控え室に来て、二宮にこう言った。
「ユー、戦時中の若者イメージにぴったりだね」
気づけば、『硫黄島からの手紙』のオーディションが決まっていた。言われるがまま受けに行った二宮は、合格した。『キネマ旬報』の元編集長で映画プロデューサーの掛尾良夫氏(城西国際大学メディア学部教授)が語る。
「前に出る芝居と受ける芝居がありまして、二宮さんは受ける芝居ができるんです。俳優の中には、ともすれば自分が前面に出ようとして、結果的に作品のバランスを壊してしまう人がいる。二宮さんは自然と場面に溶け込み、周囲の俳優とバランスがとれる。できないことはやろうとしないのが彼の強みであり、強く自分を押し出そうとしたり、あえて準備をすれば、作品も二宮さん自身のバランスも崩れると思います。
ただ、今の彼がどんな役でもできるかといわれると難しい。人生の苦難を打開していく主人公や、ボロボロになるまで愛欲に溺れる男役は向いてない。彼の天性の魅力を引き出してくれる監督との出会いも、俳優業を成功に導いた要因でしょう」
巡り会う作品にも助けられて受賞した主演男優賞だった。だからこその反感や嫉妬もある。
「一見すると俳優業に冷めたようにも見えるニノが、大御所監督の作品に出て、サクッと賞をとっているように見える。“なんであいつが”という気持ちの人もいるでしょう。でも、彼は周囲の声も受け流してますね。何を言われても気にしない」(二宮を知る映画関係者)
※女性セブン2016年3月24日号