世界各国に存在する暴力組織は時に公権力と激しく対峙しながらも、彼ら闇勢力は国家と常に密接な関係を築いてきた。
ロシアンマフィアの起源は15世紀。1900年代初頭、ロシア革命前後に革命ボリシェビキ(共産党員)と組み破壊活動を行っていた「バンダ」という武装集団が近代マフィアの源流にあたる。最盛期はゴルバチョフ書記長、エリツィン大統領のころで、5000組以上、構成員は10万人を擁した。
カジノやポルノ、麻薬取引などがロシアンマフィアの主な収入源であった。ソ連崩壊前後は中古兵器、ウランの横流しも多く行われた。日本は近年、カニ、材木、中古車転売などの重要なマーケットとして位置づけられている。
「かつてのマフィア世界の住人が表舞台に躍り出て、マフィア経済を基底とするマフィオクラシー(マフィア政治)が形成されている」(青山学院大学名誉教授・寺谷弘壬氏)
と言われるように、財力と影響力をつけたマフィアたちは企業家、経営者として表の顔を持つようになったのが特徴だ。
ソ連崩壊後のロシア最大マフィア・ソンツェボ組の2代目ミハシ(ミハイロフ)は1200の企業を経営し、孤児支援慈善基金の総裁でもある。当然、政治家との繋がりも濃い。しかしロシア経済を牽引するマフィアは政府やプーチン大統領を脅かすことはない。「むしろプーチンの銀行として機能している」と前出・寺谷氏はいう。プーチンはサンクトペテルブルク副市長時代にカジノやガソリンスタンド(民間)の導入に助力するなど、以来マフィアに強い影響力を持つ。
※SAPIO2016年4月号