競馬界は16年ぶりに誕生した女性騎手・藤田菜七子(18)の話題で持ちきりだ。JRAデビューとなった3月5日の中山競馬場には2万1953人が来場。藤田の初出走レースの売り上げは5億3947万4700円で、前年の同レース比で32.3%増と“菜七子景気”を巻き起こした。
デビュー戦では2着に食い込んで、実力の片鱗も見せ、天才・武豊(46)も「僕のデビュー時より上手いんじゃないか」と舌を巻いた。だが、熱を帯びるばかりのフィーバーを懸念する声もある。JRA初の女性騎手で、競馬解説者の細江純子氏が語る。
「注目されればその分、成績を求められ、それが負担になることも考えられます。競馬はスポーツである反面、大きなお金の動くシビアな世界で、男性でも生き残るのは大変です。だから長い目で見てあげることも大切。報道が過熱しすぎではないかと心配です」
実力が人気とマッチすれば問題ないのだか、目下、藤田はレース以外の“業務”で多忙を極めている。
「3月17日にはプロ野球のオープン戦で始球式を務めます。4月の桜花賞(G1)の際に企画されている、ファンを招いての厩舎見学ツアーにも参加しなければなりません」(競馬紙記者)
見学ツアーは“菜七子ファン”の申し込みが殺到しているというが、ある競馬関係者は不安を隠さない。
「新人騎手は所属厩舎での仕事をこなしつつ、騎乗経験を積むために各厩舎を回って調教に参加する。トレーニングも欠かせません。しかし、イベント参加や取材の対応に追われる藤田騎手はその時間が十分でない。本人も危機感を覚えているのではないでしょうか」
もっとも、競馬界の“新入社員”である藤田は駆り出されればどこへでも出向かなければならない立場。
「JRAにとって久々の大きな明るいニュース。特に後藤正幸理事長はファンサービス部や企画部を歴任してきただけに、藤田人気を競馬人気復活の起爆剤にしたいという考えがあるようです。今後も藤田騎手は“キャンペーンガール”として様々なイベントに参加しなくてはならないでしょう」(同前)
“金の卵”が使い捨てにされないことを願うばかりだ。
※週刊ポスト2016年3月25日・4月1日号