芸能

振り幅大きい刑事を演じ分ける舘ひろしに「定年なし」評

舘ひろしの刑事魂が話題の『クロスロード』(公式HPより)

『あぶない刑事』シリーズでの“タカ”役がおなじみの舘ひろし(65才)が、2月から始まったドラマでも刑事を演じている。主演するNHKBSプレミアム『クロスロード』で、『あぶない刑事』とはまったく対照的な役柄を好演していると評判だ。コラムニストのペリー荻野さんがこのドラマも見所と、今月で66才を迎える舘ひろしのいまだ“現役”の演技について解説する。

 * * *
 NHKBSプレミアム『クロスロード』は、久々に石原軍団色の強いドラマだ。主人公は、青梅中央署警務課の尾崎(舘ひろし)。元本庁のエリート刑事だったが、25年前のある事件がきっかけで、捜査の一線からはずされ、今は都内遠隔地の警察署を転転とさせられている。
 
 一方、25年前、尾崎を窮地に陥れた記事を書いた張本人、新聞記者の板垣が、もうひとりの軍団重鎮神田正輝。さらに尾崎が勤務する青梅中央署の署長が徳重聡という布陣である。さっそく、第一話で尾崎と板垣、因縁のふたりが再会、至近距離ですれ違う場面は、約40年前のドラマ『大都会 闘いの日々』で石原裕次郎と渡哲也がすれ違いざまに向き合う場面を彷彿とさせた。この『大都会』では、裕次郎が新聞記者、渡が刑事。神田正輝は新人記者役で俳優デビューしたドラマでもある。

 かつては、敵と戦うため、ヘリを飛ばすのは当たり前。本物の煙突を倒し、船を炎上させ、実在のレストランを爆破したことすらあった石原軍団の刑事ドラマ(ちなみに煙突には鉄骨が入っているため、それを切断してから倒す必要があり、船は沈没させると大変なので浮いた状態で残るよう消火に気をつけたのだとトーク番組で舘自身が語っていた。(気をつけて炎上させるって…)だが、今回は静かなおとなの人間ドラマということで、破壊シーンは現時点では皆無。管轄内で未解決の強盗殺人事件に関係しているらしい白骨死体が発見されたというのに、制服姿の尾崎の仕事といえば捜査本部になる部屋に黙々とパイプ椅子を並べるのみ。捜査会議にも出してもらえないのである。
 
 尾崎は定年まであと二年。「不完全燃焼でやり残したことがある」と片道二時間もの電車通勤に耐えている。近況を聞いた義父に何時に起きるのかと聞かれると「四時です」ときっぱり。ひええ、舘ひろしの口から朝四時早起きセリフが出るとは!
 
 すっかり牙を抜かれたかに見える舘ひろしだが、それは早とちりというものだった。たとえば、妻を亡くした尾崎が、ひとりいきつけのバーで飲む場面。マスターにことわりもなく、針を落としたレコードからはサックスのムード満点の演奏が。ただのしおれたおじさんではない雰囲気が漂う。

 さらに尾崎の射撃シーン。黒い円の的を撃ち抜くたびにできる穴からのぞく鋭い眼光はまぎれもなく、いつもの暴れ刑事の眼。そりゃそうだ。今冬公開された映画『さらば あぶない刑事』では、定番のバイクにまたがってショットガンを撃ちまくるシーンがあったばかり。牙はバッチリ現役だ。

 黒サングラスの小粋なコメディ刑事とサングラスなしのまじめ刑事。二種類のモードを使い分ける舘ひろし(1950年生まれ。私生活ではコンビニに行ったことがなく、10年前『おしゃれイズム』で初体験。支払い前にポテトチップスの袋を破いて食べるなどやりたい放題。また電車にも乗らないため、JRをうっかり国電などと言っちゃう)刑事にまだまだ定年はなし! ドラマや映画の上で何度定年を迎えようと、他の作品では不死鳥の如く復活する。それが舘ひろし永遠の刑事魂なのだ。

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン