ヤクザ、マフィア、ギャング、黒社会と呼び名は違えども、世界各国に存在する暴力組織。時に公権力と激しく対峙しながらも、彼ら闇勢力は国家と常に密接な関係を築いてきた。
軍事政権時代、韓国ヤクザは政府の「尖兵」だった。1950年代、初代大統領の李承晩は野党の集会などに暴力団を乱入させ、会場を修羅場にしていた。1960年の大統領選では全国の暴力組織を束ねた反共青年団が創設され、団員が不正選挙に動員された。
クーデターで民主政権が誕生してからもヤクザの政治介入は続いた。全斗煥政権時代には金泳三、金大中らが結成を図った統一民主党の地方事務所が政府筋の差し金で角材を持った暴力団に襲撃される「ヨンパリ事件」が起きた。
1988年に就任した盧泰愚大統領は「犯罪との戦争」を表明し、最高検察庁に民生治安問題の担当部署を新設して取り締まりを強化。1990年には大統領特別宣言を発布し、暴力団組織を一斉掃討して1年間に700人を拘束した。
以降、時の権力と手を握る「政治ヤクザ」は衰退した。2014年には国内最大の暴力団「ポンソバン派」の副首領が恐喝などの容疑で逮捕され、組織が壊滅状態となった。
2015年9月現在、韓国の警察が把握する暴力団は213派、約5300人。日本と同様、企業のM&Aや金融、建設談合など、グレーゾーンで暗躍する「インテリヤクザ」が増えると同時に、特定の組織に属さず犯罪を行う“半グレ”が台頭している。
※SAPIO2016年4月号