男女雇用機会均等法の施行から今年で30年。近年、消防士や運転士など、「男の職場」と見られていた分野への女性の進出が目覚ましい。一方で、その性格上、ごく最近まで「女人禁制」の職業があった。
近代に生まれた女人禁制の仕事にトンネル工事がある。実はつい最近まで、トンネル工事の現場に女性が入ることはできなかった。その理由は、「山の神は女性であり、そこに穴を開けるトンネルに女性が入ると自分の領域を侵されたといって怒ってしまい(あるいは嫉妬してしまい)事故が起こる」というもの。危険と隣り合わせのトンネル工事の当事者たちは大真面目にこうした禁忌を守っていた。
実際に女性の入坑が拒否されることもある。2001年には群馬県安榛トンネルの工事見学会で参加者の女性約30人が退去させられ大きく報じられた。最近では女性の現場監督も登場するなど、徐々に変化が見られる。他にも、“実は女人禁制だった”という職業がある。
◆杜氏
酒造りで女性が蔵に入るのはタブー。神様が機嫌を損ねて酒がうまくできなくなると信じられていた。神事に関わる飲み物に女性が関与するのを忌むというところから来ているようだが、酒造りは長期にわたり厳しい管理が必要な作業。発酵という自然に左右される部分も大きいため、ゲン担ぎも必要だったのだろう。現在では多くの女性杜氏が全国各地で活躍している。
◆鵜飼い
かつて鵜飼いの鵜匠は世襲制で、長兄のみが相続できる女人禁制の職業だった。漁法から観光資源へと目的が変わった近年では、女性の鵜匠も誕生。2013年に木曽川初の女性鵜匠がデビューしたときは“美人すぎる鵜匠”と話題になった。
◆パイロット
日本では女性がエアラインのパイロットになる道は閉ざされていた。もとより狭き門の世界だが、操縦に必要な体力や体格の面で男性のほうが有利なこともあり、養成する側がハナから女性を想定していなかったのが実情のようだ。現在、日本の航空会社で働く女性パイロットは約50人。全体の1%に過ぎず、女性機長となるとわずか5人という男性社会となっている。
※SAPIO2016年4月号