誰もが名前を知っている歴史上の偉人たち。彼らの「カネ」にまつわるエピソードには興味深いものが多い。東北・北陸を巡った紀行文『おくの細道』で有名な俳人、松尾芭蕉。旅費を捻出するために旅先のアルバイトで稼いでいたという。歴史研究家で文教大学付属高等学校教諭の河合敦氏がいう。
「旅の途中に各地の句会で、一句100文(約1200円)で4~6句程度の添削を行ない、旅費の半額程度を稼いでいたようです」
また、東日本を代表する豪商の紀伊国屋文左衛門は、城や武家屋敷などの整備が進んだ“建設バブル”ともいえる元禄時代に材木商として50万両(約500億円)もの財をなした。吉原遊郭で豪遊していたエピソードが伝えられている。
その紀伊国屋を上回るのが、西日本の豪商「淀屋」の五代目である淀屋辰五郎。あまりに財産を持ち過ぎていたがゆえに、その影響力を幕府に恐れられた。
『江戸商人の経営哲学』(にっかん書房刊)の著者で江戸商人研究家の茂木正雄氏の話。
「町人の分限を超え、贅沢な生活が目に余るという理由で屋敷(大阪の心斎橋や御堂筋周辺の敷地約1万坪)、金12万両(約120億円)、銀12万貫(同2000億円)を幕府に没収された。さらに将軍家に貸していた80万両(同800億円)も踏み倒されて没落してしまいました」
知れば知るほど面白い歴史上の偉人のカネの話。新たな資料の発見によって、今後意外な人物の懐事情が明らかになるかもしれない。
※週刊ポスト2016年3月25日・4月1日号