年初からの世界同時株安は、複合的な要因から生まれたが、こと日本株については、政治的要因から今後の反転上昇も見込めるという。カブ知恵代表・藤井英敏氏が日本株を取り巻く相場環境について解説する。
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昨年12月初めに2万円台だった日経平均株価は、2か月余りで5000円以上も下げるなど波乱の展開が続いている。
これには複合的な要因が絡んでいる。まず今年1月21日の1万6017円までの下落は、原油安に伴う産油国の財政悪化懸念から政府系ファンドをはじめオイルマネーの引き揚げが進み、米利上げも相俟って新興国の債務不履行懸念も高まるといった“負の循環”が主因だった。
その後、原油安という不安材料が薄れ、1月29日に日銀が「マイナス金利」導入を発表し、いったん市場は落ち着くかに見えた。しかし今度は欧州発の金融不安が浮上。ドイツ銀行が過去最大の赤字を計上したのを機に信用不安が広がり、欧州の銀行株が軒並み下落した。世界的なリスクオフの高まりから安全資産とされる円が買われ、急激な円高が進行。それが嫌気されて日本株も売り込まれた格好だ。
もちろんこのまま下がり続けるわけではなく、相場は下げ止まれば上がる。これが鉄則だ。
このような世界的な不安を払拭して反転のきっかけとなるのは何か。そこにはやはり、日米欧の協調が欠かせないだろう。
すでに示唆しているようにECB(欧州中央銀行)が追加緩和に踏み切るのはもちろん、金融システム安定のための対策が打ち出される可能性もある。米FRB(連邦準備制度理事会)も協調路線を重視しており、今後の利上げのペースを鈍化、さらには再び利下げに転換するとなれば、事態は一気に好転するだろう。
日本でも、日銀のさらなる追加緩和とセットで、政府が財政出動や規制緩和などを打ち出してくることが予想される。
それら日米欧の協調がかみ合うことで、グローバルマネーが再びリスク資産に流入する可能性は高まるに違いない。
なかでも日本株は政治的要因で株高が見込める。そもそもアベノミクスは「官製相場」であり、安倍政権は7月の参院選に圧勝し、2017年4月の消費増税を実施するために、ゆうちょマネーや年金マネーを総動員してでも株価を押し上げておく必要がある。
加えて、消費増税に耐えられるような景気回復が見込めない場合、増税延期を大義に衆参同時選挙に打って出るかもしれない。そうなれば当面の重石がなくなり、日経平均も年内には昨年6月の高値(2万952円)を抜けて2万1000円を超えてくる展開も予想される。
そこまで見通していくと、波乱の展開はむしろ「絶好の買い場」といえるだろう。難局相場だからといって、ここで手を出さないようでは、この先も株で勝つことはずっとできないといっても過言ではない。
※マネーポスト2016年春号