予備群を含めれば患者の数は2000万人。「糖尿病」は日本人の国民病ともいえる。ところが、同じ病名なのに60歳を境に、合併症の危険や治療の常識が変わるという。
糖尿病で起こりやすい合併症が「腎症」だ。腎臓の働きが低下し、老廃物を排出する機能に異常が起きる。これは血糖値の高い状態が長期にわたって続くことで少しずつ進行するという。日本医科大学客員教授でHDCアトラスクリニックの鈴木吉彦院長が解説する。
「腎症は糖尿病を患う期間が長いほど腎臓にダメージが蓄積して発症しやすくなる。つまり、糖尿病になる時期が早いほど腎症を併発しやすくなる」
腎症は症状が進行すると腎不全となり、人工透析が必要になる。週3回ほど通院し、1回4~5時間の透析を受けることになるため患者の負担は一気に増大し、日常生活は一変する。
「腎症」以外にも恐ろしい合併症がある。芝浦スリーワンクリニックの板倉広重名誉院長がいう。
「若い世代の患者は神経障害や網膜症につながる細い動脈の障害が出やすい」
対して60歳以上の患者は脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まるという。
「これらの病気は大動脈など、太い血管が詰まることによって引き起こされるものです。高齢者は糖尿病以外にも血管に障害をもたらす疾患を抱えがちです。
たとえば高血圧、脂質異常、高コレステロールなどの生活習慣病関連の症状です。そうした人はより注意が必要となります」(同前)
※週刊ポスト2016年3月25日・4月1日号