春夏通算7度の全国制覇を誇るPL学園の黄金期、多くの野球少年がユニフォームの胸元を右手で握りしめるPLナインの所作を真似した。センバツ開幕前日の3月19日、近大泉州高校との今年初めての対外試合に臨んだ12人のPL現役部員も、打席に入る直前、あるいは守備位置につく時、伝統の祈りを捧げていた。
だが、結果は昨秋の大阪大会で2回戦敗退に終わった近大泉州高校を相手に、0-14という屈辱的大敗。
エース右腕は制球が定まらず、1回途中で4失点降板。コールドゲームのない練習試合で2人しかいない投手陣は打ち込まれ、打線も沈黙した。試合中は相手校に「しばけ! しばけ!」と野次られ、14点目を奪われた後、大差があるにもかかわらず、次の試合の練習台とでも思われたか送りバントを決められる始末。
部員たちは最後まで試合を投げなかったが、かつてPLといえば、試合前から対戦相手が名前負けで萎縮していた。新規部員募集を停止し、この夏以降の休部が決まっているPLにその面影はない。
試合後、野球経験のない監督として3代目となる川上祐一新監督はこう語った。
「PLの剣道も野球も目的は世界平和。なぜ野球部があるのか。その存在意義をお伝えしていきたい。(夏以降は)休部と決まっているだけで、それ以外は何も聞いておりません」
存続への一縷の望みは、2009年夏以来の甲子園出場を果たすことだが、その道のりはとてつもなく険しい。
●取材・構成/柳川悠二(ノンフィクションライター)
※週刊ポスト2016年4月8日号