色気は売っても心までは売ってはいけない──こんな133の警句が並ぶ冊子が話題だ。大阪・北新地社交料飲協会の初代理事長(故人)が1980年に作った「ホステス心得帖」は昨年11月に再出版され、版を重ねている。男が読んでもためになる「お水の教科書」の中から、「美しさの度合いと個性」という章を全文掲載する。(全10回)
(1)特別に、絶世の美人でないこと。絶世の美人だと、男性は、かえって近寄り難くて敬遠しがちである。また、美人であることをうぬぼれて、男の甘言や色香に迷い、仕事を怠りがちになる。いわゆるプロ根性に徹し切れない場合が多いからである。
(2)まあまあの美人だから、親近感がある。男性として「オレだって」と思わせることが必要だ。
(3)その人のムードが華やかであること。ただし、店用服装と生活用外出着とは、違うことを知らねばならない。地味すぎて、生活が滲み出てしまってはダメである。毎日、美容院に行くことも大事。
(4)手が綺麗であること。手入れが悪いと現実の生活が見えてしまう。顔や胸は整形できるが、手はできず、年齢がハッキリ出る所でもある。
(5)一度見たら忘れられないような、個性的な容貌であること。神秘的であればなお良い。少なくとも所作動作だけでも、そのように振舞うべきである。
(6)美人には2種類ある。黙っていると美人というタイプと、喋り出すと美人というタイプである。黙っていると美人というタイプは、3回で飽きる。
(7)性格が誠実で素直でないと、本当の美人には見えない。どんなに顔・形が良くても心の化粧も忘れずに。幾ら整形手術をしても眼に険が表れるからだ。眼の輝きは、整形できない。
(8)オツに澄まして微笑を忘れた美人は、本当の美人ではない。微笑んだ時の美人が本当の美人。笑い顔に険のあるホステスは、要注意。
(9)下品なコトバを使わぬこと。馴れ馴れしいコトバと、親しいコトバは違う。美人にふさわしい優雅なコトバを使うこと。
(10)服装には特に気を配ること。下品にならず上品で華やかで、素人とひと味違うセンスの良さであること。少なくとも、毎月1枚または1着新調しよう。服装も給料の中に入っている。
※週刊ポスト2016年4月8日号