3月19日、神戸市中央区に突っ込んだダンプカーが、神戸山口組山健組の直参・志闘会の事務所を破壊した。
「志闘会の事務所は三宮のど真ん中で、狭い路地を入った場所にある。突っ込んだ時、事務所から組員が出てくれば、確実に捕まるような場所で、これまでとは完全に毛色の違う事件」(神戸山口組関係者)
報復は迅速に実行された。翌日には大阪市の山口組直参・織田組事務所前に車が乗り捨てられ、郵便ポストが壊された。東京の足立区でも乱闘騒ぎがあった。さらに21日、神戸市内にある弘道会関連施設で、駐車場にあった車二台が破壊されたのだ。
今風なのは、現場写真や動画がネット経由で拡散したことだろう。使用されるのは主にLINEというアプリで、発生から数時間後には、当方のようなマスコミにも情報が到着する。
山健組への攻撃では事務所内部の防犯カメラで、ダンプ攻撃を確認している組員たちの動画が撮られ、LINEを通じて拡散された。その数日前には、六代目山口組国粋会系の事務所にあった車が破壊された写真も出回っている。
歌舞伎町の集団暴行事件では、地元ヤクザが動画を撮影し、それが動画サイトやテレビ局に出回ったことでトラブルに発展した。
「撮影した組織に激しいクレームが入ったと聞いている。なにしろあの動画が逮捕の決定的な証拠になったのだから仕方ない。神戸の動画は当事者が撮ったものだろう。『警察から漏洩した』と言っているけど、どこまで信じていいかわからない」(神戸山口組と親しい独立組織幹部)
山口組の上層部が、既存メディアを使って平静をアピールしたのに対して、組織の末端ではネットを使った情報戦が激化している。
そのわりにヤクザたちのネットリテラシーはお粗末で、抗争事件の当事者がFacebookで書き込みを一般公開していたりする。抗争にネットが使用されるようになった黎明期だけに、事件の現場から「襲撃なう」がつぶやかれる可能性さえ否定できない。
●文/鈴木智彦(フリーライター)
※週刊ポスト2016年4月8日号