海外展開する日本食レストランが急増している。寿司、ラーメンに続く「Japanese food」はなにか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏がリポートする。
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2013年10月に「和食」が世界無形文化遺産に登録されてから2年半が経とうとしている。現在、世界的に日本食レストランの数が急増中だ。農林水産省の調べでは、2006年に2万4000店だったのが、2013年までの7年間で5万5000店まで伸びてはいた。だがそれから2年経った2015年には8万9000店。この2年で60%以上という急激な伸びだ。
とりわけこの2年で急激に加速したのが、これまで日本食レストランが少なかった地域だ。オセアニアは2.6倍、中東は2.4倍、アフリカ2倍と一気に店舗数を伸ばしている。いずれの地域でも、和食と言えばこれまで寿司や高級和食店が中心だったが、リーズナブルな業態の店舗も増えてきているという。
アフリカのセネガルには「からあげ弁当」や「とんかつ弁当」などを出す店があるし、オーストラリアで人気の炭火焼肉店では七輪での焼肉を楽しむことができる。価格もこなれてきて、日本人駐在員だけでなく、現地の住民にも受け入れられるようになってきたという。
ヨーロッパ(1.9倍)やアジア(1.7倍)、北米(1.5倍)の伸びも堅調だ。伸び率では”和食新興国”ほどではないが、既に一定数の店舗が出店しているからで、純増数としてはヨーロッパ5050店、アジア1万8300店、北米8100店と他の地域をぶっちぎっている。
現在、「和食」の象徴的存在である寿司や、世界中でブレイク中のラーメンに続く存在と目されているのが、うどんだ。「丸亀製麺」は、中国や台湾、韓国やベトナムなどアジア圏のほか、ロシア、オーストラリアなどにも店舗を展開。世界12の国と地域に136店舗を展開している。「日本国内も含めた全店舗中売上第一位」と話題になったハワイのワイキキ店では、日本人観光客が口々に「ハワイで見た、一番長い行列は丸亀製麺だった!」と驚くほど長蛇の列をなしている。
そのほかの香川県の讃岐うどん店「たも屋」もシンガポール、インドネシア、台湾に計12店を出店済み。ちなみに同チェーンの東京への出店は1店舗のみだ。逆に首都圏を中心に国内で345店を展開する「はなまるうどん」は中国に9店舗を出店している。讃岐勢だけではない。稲庭うどんの「佐藤養助」も台湾、香港、韓国に6店舗を出店した。
寿司で魚と米の味わいを伝え、ラーメンでは動物性のだしと、その多様な味わいで外国人を魅了した。そしていよいよ、かつおだしが世界を席巻するのか。海外での人気が高まってきたいまこそが正念場だ。果たして、日本人が考える「日本人らしさ」「和食の魅力」はストレートに海外に届くのか。まっすぐなうどんの麺のように。